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Jリーグ 7年前

湘南のアイデンティティーを託された2人のホープ。幼稚園時からともにプレー、物語は新章へ

text by 藤江直人 photo by Getty Images

小学生からベルマーレひと筋の2人が受け取ったバトン

 2002年4月には、NPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブを設立して、ユース以下を移管した。経営会社の業績に左右されることなく、普及・育成部門を7市3町へ拡大したホームタウンの「聖域」にしたい。Jリーグで初めてとなるNPO法人の設立には、不退転の決意が込められていた。

 2005シーズンにはアカデミー全体の指導方針や指導体系を整備する役割を託して、セレッソでコーチを務めていた曹監督を招聘した。経営が少し上向いた2012シーズンからは、ユースだけをトップチームと同じ強化部の組織に移して連携を強化した。

 湘南ベルマーレとしても大切に守り続けてきた普及・育成部門から、古林将太(現名古屋グランパス)、菊池大介(現レッズ)、そして遠藤らが育ち、成長が認められた証として新天地へステップアップしていった。

 そして2017シーズン、小学生からベルマーレひと筋で育ってきた齊藤と石原が、緑と青の歴史と思いが凝縮されたバトンを受け取った。昨年4月にユースのコーチに就任し、今シーズンからはトップチームに加わった小湊隆延コーチは目を細める。

「年下の2年生や1年生が、彼ら2人を見ながら『ああいう選手になりたい』とリスペクトしているんですね。目標となる選手であり、なおかつお互いを引き上げ合う関係が、アカデミー全体にいい影響を与えていた。彼らがトップチームで活躍すれば、下の子どもたちにさらに刺激を与える。曹監督も大事に育てていくと思いますし、今後が本当に楽しみですよね」

 J2降格からの捲土重来を期す今シーズン。菊池や三竿、大槻周平(現ヴィッセル神戸)らが旅立ったが、その分だけ、未来へ希望を灯すホープたちの鼓動が脈打っている。齊藤と石原、同学年で市立船橋から加入したDF杉岡大暉、そして神谷の4人が、出場資格をもつ2020年の東京オリンピックの舞台で躍動する光景を、眞壁会長以下のフロントは思い描いている。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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