増額する賞金。大型補強で好循環へ
特にこのオフは、移籍による補強に積極的に動いた。前出のレオ・シルバだけでなく、ペドロ・ジュニオール(ヴィッセル神戸)と金森健志(アビスパ福岡)の両FW、山本脩斗が孤軍奮闘している左サイドバックを務められる三竿雄斗(湘南ベルマーレ)を獲得した。
さらに1月下旬には、韓国代表の守護神を務めるGKクォン・スンテ(全北現代)も加入。ブラジル代表歴をもつMFレアンドロ(パルメイラス)も期限付き移籍で獲得するなど、昨シーズンから在籍するDFブエノを含めて、5人に拡大された外国人選手枠をすべて行使している。
もちろん生え抜き組でも高卒のDF小田逸稀(東福岡)、FW安部裕葵(瀬戸内)が加入し、モンテディオ山形に期限付き移籍していた7年目のMF梅鉢貴秀も復帰させた。ポジションごとの争いが激化し、チーム全体の層が厚くなった状況を、背番号を「34」から「9」に変えたアカデミー出身の20歳、FW鈴木優磨はこう表現する。
「ウチは常に優勝しなきゃいけないクラブ。そのために多少借金をしてでも、いろいろな選手を取りにいったと思う」
クラブワールドカップ準優勝で手にした約4億7000万円を含めて、昨シーズンのアントラーズは総額で7億5500万円もの賞金を獲得した。「もっとも、それらは今年度の決算になるから、投資に回すといっても難しいんだけどね」と苦笑いしながら、鈴木常務は大型補強がもつ意味をこう説明する。
「チーム内の競争を激しくするような補強をして、上手くすれば勝てるというチームから、力で勝ち取れるチームを目指していこうということ。次のシーズンでも勝てばいろいろな配分金や賞金も入ってきて、投資というか、いいサイクルが生まれるので」
Jリーグは今シーズンから、イギリスの動画配信大手パフォーム・グループが提供するスポーツのライブストリーミングサービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と、10年総額で約2100億円にのぼる放映権契約をスタートさせる。
たとえばJ1では、それらが原資となって均等配分金が1億8000万円から3億5000万円、J1優勝賞金が1億円から3億円へそれぞれ増額。さらにリーグ戦で優勝すれば、3年間で最大15億円となる新設の理念強化配分金も加わる。つまり、2017シーズンの優勝は21億5000万円の収入増を意味することになる。
「ここで勝って勝ち組に入るのと、そうじゃないところとはどんどん差がついていく。その意味でも、今シーズンは少し無理をしてでもやらなきゃいけない、という思いはありますね」