「同じ陣容で戦えるのはだいたい3年間」
クラブ創立から四半世紀を越えた鹿島アントラーズが、ライバル勢の追随をまったく許さない、Jリーグで屈指の常勝軍団として君臨していることはあらためていうまでもない。しかし、フジゼロックス・スーパーカップを含めて24個もの国内タイトルを獲得してきた歴史を振り返ると、三度におよぶ無冠の期間が存在していることがわかる。
最初は1995シーズンまでの3年間。次は2003シーズンからの4年間。そして、直近となる2013シーズンからの2年間。2シーズン連続の無冠が現実味を帯びはじめていた2014年の秋には、鈴木満常務取締役強化部長からこんな言葉を聞いたことがある。
「いまの状態で(柴崎)岳が海外に移籍しなければ、必ず強くなると思っている」
無冠に甘んじていた期間の心境を表すならば、雌伏して時の至るを待つ、となるだろうか。実力を養いながら活躍の機会をじっと待つ、という意味のことわざが現実のものとなる手応えを、1996シーズンから強化の最高責任者を務めている鈴木常務はつかんでいた。
果たして、アントラーズは2015シーズンのヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)を制覇。3シーズンぶりとなるタイトルを獲得すると、昨シーズンはJ1年間王者と天皇杯の二冠を獲得。FIFAクラブワールドカップでは決勝に進出し、名門レアル・マドリードと延長戦にもつれ込む好勝負を演じたことはまだ記憶に新しい。
アントラーズの生き字引的存在でもある鈴木常務は、「同じ陣容で戦えるのはだいたい3年間」を持論としている。アントラーズは2007シーズンから、前人未踏のリーグ戦3連覇を達成。最強を誇った3年間で蓄えた財産もあって、2010シーズンに天皇杯、2011シーズンからはヤマザキナビスコカップを連覇している。
獲得したタイトルの数は一気に増えたが、チームそのものは伸びしろを完全に失ってしまった。必然的に入り込んだ三度目の無冠期間は、フロント主導による世代交代が積極的に推し進められた時期でもあった。その象徴的な存在を担い、タイトル奪還へのキーマンを託されたMF柴崎岳が、リーガ・エスパニョーラ2部のテネリフェへ完全移籍した。