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吉田麻也がリーグ杯決勝を戦った意義。ベスト11にも選出、日本人CBの先駆けに【海外組の真価~日本人選手の現在地】

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images , Kozo Matsuzawa

空中戦ではイブラヒモビッチにも引けを取らず。ファンも「麻也コール」

ズラタン・イブラヒモビッチ
吉田がマークについたズラタン・イブラヒモビッチ【写真:Getty Images】

 ほかにも後半25分、味方がマルシアルに左サイドを破られてエリア内へのスルーパスを出された場面。リア内に走りこんだリンガードがボールを受けてシュート体勢に入ろうするも、素早く反応してカバーリングに入った吉田の絶妙のタイミングでのタックルでピンチを脱したり、若手のスティーブンスのポジショニングが悪いためにカバーをしなくてはいけない状況も何度もあった。

 さらに前述の後半22分にボールをカットしたあと、吉田はそのままドリブルでハーフウェーライン付近まで駆け上がって攻撃を狙っていった。この際には、味方の前方への動き出しが遅くてボールの出しどころがなく、仕方なくサイドに預けて後方へと下がっていった。一部のセインツサポーターから「麻也コール」が起きていたが、彼らも、今季の吉田の成長を認識しているのである。

 なぜなら、過去のこういった場面では、ボールを持つと慌ててしまいプレー選択を誤るというシーンも多く見られてきたからだ。だが少なくともこの試合ではそういったプレー判断のミスは少なく、試合後の地元紙や現地WEBメディアの評価では、3失点を喫した守備の中心にいた吉田に対して10段階中「7」や「8」を付ける媒体もあったほどである。

 もちろん、すべてが完璧だったとは言わない。2点目のリンガードのゴールは、守備的MFのロメウが相手にスペースを与えるべきではなかったというのが大前提だが、吉田も素早く1、2歩前に詰められればシュートコースは狭まり失点は免れられたかもしれない。

 3点目は、敵陣に攻め上がっていた際に吉田が触れたボールがイブラヒモビッチにわたってしまうという不運もあった。そして、エリア内ではスティーブンスがイブラヒモビッチのマーキングをすべきであり、ポグバのマークしていた吉田は責められるべきではないかもしれない。しかしながら、あそこでエリア内の中央でフリーとなっていたイブラヒモビッチと競り合いにいき、ヘディングシュートをしにくくさせることは無理だっただろうか。

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