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UAE戦、称賛すべき審判団。“アジア最高の主審”が披露した「無難な」レフェリング

text by 中山佑輔 photo by Getty Images

UAE対日本の試合を担当したラフシャン・イルマトフ主審
UAE対日本の試合を担当したラフシャン・イルマトフ主審【写真:Getty Images】

 3月23日、ロシアワールドカップアジア最終予選の試合が開催され、日本代表はUAE代表に2-0で勝利した。アウェイでの試合ということもあり難しい展開が予想されたが、日本代表のゲーム運びはとても円滑なものだった。もちろん久保裕也や今野泰幸ら選手たちの活躍があったからこその白星ではあるが、日本代表が判定の部分において「ストレスなく」プレーできていたことは見逃せない。

 ときにサッカーの試合ではレフェリーがうまくゲームマネジメントできず、選手や監督、そして観客たちが審判団に対していらだちを覚えることがある。2016年9月に埼玉スタジアム2002で開催されたUAEとの試合では、UAEにPKが与えられ、ゴールラインを割っていたはずの浅野拓磨のゴールが認められなかった。こうしたことを受け、ハリルホジッチ監督が「本当に審判の笛の吹き方は受け入れられない」と苦言を呈していたことは記憶に新しい。

 迎えた今回のUAE戦。日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督は試合前日会見で「審判についてはあまり話したくない」としながらも、「明日の審判は信頼しています。UAEは素晴らしいチーム、そこに集中したい。正確な笛をふいてほしい。W杯に行く決定的な試合になるかもしれないので」と語り、“正しい”ジャッジを求めていた。

 この試合を任された主審は、AFC(アジアサッカー連盟)の最優秀審判に何度も選出されているウズベキスタン人のラフシャン・イルマトフ氏。“アジア最高のレフェリー”との呼び声に違わず、取るべきファウルを取り、カードを出すべきシーンでカードを提示し、毅然とした態度で円滑に試合を進めていた。

 特段問題なくゲームが進行しているということを褒め称えるのはなかなか難しい。とりあげるべきトピックが見つかりにくいからだ。しかしワールドカップ出場をかけているアジア最終予選で、選手・監督をヒートアップさせず、スムーズに試合を進めていたイルマトフ氏ら審判団のレフェリングは称賛に値するものであるはずだろう。

 優れた技術をもつ選手は、難しいプレーを簡単にこなしてしまうがゆえに、そのすごさがわかりにくいことがある。スピードのあるパスを最適な場所にピタリと止め、バランスを崩さずに次のプレーへ移行する。その所作があまりにも自然であるために、見るものにとってそのすごみがわかりにくい。レフェリングにも似たようなことが言えないだろうか。無難にこなしていることこそに凄みがあると。

 審判団はほめられることが少ない。「これは素晴らしいジャッジだった」と称賛されることはなかなかなく、ミスばかりが強調される。だが今回のUAE戦のように、取り立てて指摘するべきことがない試合こそ、審判団をたたえるべきなのかもしれない。

(文:中山佑輔)

【了】

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