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日本代表 7年前

吉田麻也が抱く主将像。「僕は長谷部誠にはなれない」。ハリルJを束ねるDFリーダーの存在感

text by 元川悦子 photo by Shinya Tanaka , Getty Images

アジアでの戦いにおけるハリルジャパンの理想と現実

吉田麻也
イングランドで吉田はイブラヒモビッチら世界トップクラスのFWを相手にしている【写真:Getty Images】

 そんな吉田がタイ戦で目指すのは、「アジアでの現実的な戦い」と「ハリルジャパンが目指す理想の戦い」を少しでも近づけること。ボスニア人指揮官は世界基準を見据えて、前線からアグレッシブにプレスに行き、相手をはめてボールを奪い、素早い攻めからゴールを狙うスタイルを志向している。

 しかし、アジアでは相手が守りを固めてくることが多いため、日本はボールを支配しながら攻めきれないという苦境に直面することが多い。屈辱的ドローを余儀なくされた2015年6月のシンガポール戦(埼玉)などはまさにその象徴だった。果たしてそのギャップをいかに埋めていくのか。吉田はヒントがUAE戦にあったと見ている。

「前回の試合は特に後半、ラインをあえて高く上げすぎずにスペースを消していた。暑さや移動の疲れ、アウェイ、選手の特徴だったりを考えてそう判断したんですけど、それは本来の僕らの形ではない。次はホームなんで、もう少し理想に近づけるようにしたいですね。現実問題、ワールドカップに行くためにはアジアで勝たなきゃいけない。UAE戦では理想と現実のバランスがうまく重なったかなと思うんで、タイ戦ではそういう中で高いパフォーマンスを見せたいですね」と守備のリーダーは野心をのぞかせた。

 タイはなかなかスペースを与えてくれないかもしれないが、そこで焦ったら相手の罠にはまってしまう。多少リズムがかみ合わなかったとしても、常に冷静に相手を見ながら戦い方を臨機応変に変化させていけるようになれば、日本のロシア行き、世界での躍進も見えてくる。

 2014年ブラジルワールドカップでの挫折を知る吉田は真っ先のその道筋を見出さなければならない存在だ。今回のタイ戦で当時とは全く違うチームになった日本を示すべく、彼にはピッチ上の司令官として奮闘してほしいものだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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