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Jリーグ 7年前

工藤壮人、「50番」に込めた決意と覚悟。広島の新エースが向き合う壮絶な重圧

3度のJ1制覇を誇るサンフレッチェ広島が、もがき苦しんでいる。4月30日のFC東京戦で今シーズン5度目の完封負けを喫するなど、9試合を終えてまさかの16位に低迷している。北米メジャーリーグサッカーのバンクーバー・ホワイトキャップスから加入し、エースストライカーを託された元日本代表の工藤壮人は自ら希望した「50番」に不退転の決意を込めて、目の前の現実に対する葛藤とも戦いながら、サンフレッチェを浮上させるためのゴールを追い求めていく。(取材・文・藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

結果が出ない日々。工藤は壮絶なプレッシャーと戦う

工藤壮人
工藤壮人はFC東京戦でも奮闘したが決定機をGKに止められてしまった【写真:Getty Images】

 90分間で残した自身の数字が、チームの勝敗に直結する。誰が見ても単純明快でわかりやすく、ゆえに計り知れないほど大きな責任を背負う。サンフレッチェ広島のエースストライカー、工藤壮人は相手ディフェンダーやゴールキーパーだけでなく、壮絶なプレッシャーとも戦っている。

 9節を終えた段階で、サンフレッチェは1勝しか挙げていない。4月7日のガンバ大阪戦でもぎ取った現時点で唯一の白星は、後半7分に工藤が決めた値千金の一撃を死守したものだった。ドローで勝ち点1を獲得したアルビレックス新潟との開幕戦と、ベガルタ仙台との前節でも工藤はゴールを決めている。

 翻って、ノーゴールに終わった6試合はすべて黒星を喫している。しかも、そのうち5つが完封負け。2年前のJ1王者が勝ち点5の16位に低迷し、最下位の大宮アルディージャにも勝ち点で1差に肉迫されているまさかの現実を、今シーズンから広島に加入した26歳は真正面から受け止めた。

「前回の仙台戦よりは、チャンスの数で言えば少なかったと思う。そのなかでも後半には、自分のところでチャンスを作り出したのに決め切れなかった。チームとしても正直、セットプレーで失点した場面しか相手にやられていない、という感触もあるので」

 FC東京のホーム・味の素スタジアムに乗り込んだ4月30日のJ1第9節。後半23分に与えた左コーナーキックから、こぼれ球をDF丸山祐市に押し込まれて喫した失点を最後まで挽回できない。0‐1のままタイムアップを迎えた試合後の取材エリアで、工藤は神妙な表情を浮かべた。

 工藤の言葉通りに、その右足が均衡を破る千載一遇のチャンスがあった。後半11分。高い位置でセカンドボールを拾ったDF塩谷司が、敵陣へ猛然と迫る。ペナルティーエリア内で丸山とDF太田宏介にはさまれながら、工藤はその脳裏にシュートに至る絵を鮮明に描いていた。

「イメージはできていました。ペナルティエリアの中での駆け引きは、僕自身のストロングポイントでもあるので。ただ、そこで最後に決め切るところでのクオリティというものを、もっと上げていかないといけない」

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