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Jリーグ 7年前

工藤壮人、「50番」に込めた決意と覚悟。広島の新エースが向き合う壮絶な重圧

text by 藤江直人 photo by Getty Images

昨年もあった広島移籍のチャンス。海外挑戦への思い募り…

 FC東京のゴールキーパー、日本代表の林彰洋に背を向けた体勢で塩谷からの縦パスを呼び込む。右足でトラップしながら、時計回りに体を巧みにターンさせながらボールを右足の支配下に置く。ファウルでPKを与える恐れもあったためか、丸山と太田は激しく体を寄せることができない。

 2人の間を軽やかにすり抜け、カバーに走ってきた日本代表DF森重真人のスライディングタックルが届く寸前に右足を思い切り振り抜いた。ゴールの右隅を狙った強烈な一撃は、林が懸命に伸ばした左腕に弾かれてコーナーキックへと変わってしまった。

 林のファインセーブで止められた、前半42分の塩谷の直接フリーキックと並ぶ最大のチャンス。シュートを防がれた直後に思わず頭を抱えた工藤は下を向くことなく、毅然とした口調で自らを奮い立たせた。

「仮定の話になりますけど、今日も数少ないチャンスを決めていたら、2‐1か3‐1のスコアで勝てていたかもしれない。数が少ないといってもチャンスは作っているわけですし、1試合の中で最低でも1回か2回は訪れるチャンスを決め切る集中力というものを、攻撃陣全体でもっていかないといけない」

 小学生年代から柏レイソルの下部組織一筋で育ち、2009シーズンにトップチームへ昇格。2013シーズンに19ゴールをあげるなど順調に結果を積み重ねて、クラブのレジェンド・北嶋秀朗を抜いて、通算56ゴールでレイソル歴代最多得点者となった2015シーズンのオフに新たな挑戦を選んだ。

 北米のメジャーリーグサッカー(MLS)バンクーバー・ホワイトキャップスへの完全移籍。実はこのタイミングでサンフレッチェからもオファーを受け、実際に交渉のテーブルに就いたが、サンフレッチェの織田秀和代表取締役社長によれば「海外に挑戦したい、という理由で断られました」という。

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