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Jリーグ 7年前

【YOUはどうしてJリーグに?】FC東京を離れる豪州代表FWバーンズ、試練の2年間。心で通じた通訳との固い絆

シリーズ:YOUはどうしてJリーグに? text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki

通訳の人生を変えたバーンズとの出会い

 伴にとってもバーンズとの出会いは人生における大きな転換点になった。2015年までカンボジアのナガワールドFCで現役プロ選手としてプレーしていた彼が、FC東京の通訳として帰国して1年半が経つ。

「僕がバーンズと一緒に仕事をした初めての試合が、ACLのグループステージ第2戦、ホームでのビン・ズオン戦(2016年3月1日)でした。彼はゴールを決めてマン・オブ・ザ・マッチを獲得して、その試合後の記者会見に出席したのですが、彼のことはあまりわからず僕も緊張していて。でも彼が笑顔で『僕がそばにいるから』と言ってくれました。それが本当に印象に残っています」

 そして日本で初めてタッグを組んだ戦友との別れの時がやってきた。

「僕がいままで出会ったサッカー選手、人間の中で、こんなにもプロフェッショナルというか、紳士的な人はいなかった。バーンズと離れるのは本当に寂しいです。彼と出会えて経験したこと、彼から学んだことはたくさんあります。どんな時でも諦めずに自分の全力を出し続けることを学んだので、それが彼と出会って、共に過ごした時間で味わえた何よりも一番の思い出かなと思っています」

 バーンズが試合に絡めず苦しい時期も共に過ごし、その感情を共有してきた。だからこそ「彼がハッピーな時は僕もハッピーですし、彼が苦しい時は僕も苦しい思いだった」と伴は語る。2人には選手と通訳という役割を超えた、心と心の信頼関係が出来上がっていた。

 先述の通り、昨年は監督交代とともに出場機会が激減した。常に“影”として隣に立ち、当時のバーンズの苦しみを誰よりも理解していた伴にとって、感慨深かった試合があった。約2ヶ月半ぶりのリーグ戦出場となった、昨年10月1日のアウェイ・サンフレッチェ広島戦である。

「城福さんが退任して、篠田さんが就任してからなかなか試合に出られず本当に苦しい時期が続いていた中で、アウェイの広島戦で(新体制で)初めてベンチ入りして、(後半途中から)試合に出たんです。その時のサポーターのバーンズコールと、彼の躍動している姿を見た時に、ちょっとベンチでうるっときてしまって…。彼の気持ち的にもあの時は本当に苦しかったので、印象に残っていますね」

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