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Jリーグ 7年前

柏を飛び出し、あえて選んだJ2での挑戦。湘南・秋野央樹が一気に加速させる成長速度

異色に映る挑戦が、大きな成果をあげつつある。加入4年目で柏レイソルの主軸を担うようになった昨シーズンのオフにあえて期限付き移籍を志願し、J2への降格が決まっていた湘南ベルマーレの一員になった天才肌の司令塔・秋野央樹。自らに足りない強さと激しさ、前へと攻める姿勢を「湘南スタイル」に求めた22歳のレフティーは、16日の東京ヴェルディとのJ2第23節で豪快なミドルシュートを一閃。待望の移籍後初ゴールを触媒にしながら、成長へのスピードを一気に加速させる。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

昨季途中から抱えていた悩み。「違うチームに身を置くべきなのか」

柏レイソルから湘南ベルマーレに期限付き移籍中の秋野央樹(黄緑5番)
柏レイソルから湘南ベルマーレに期限付き移籍中の秋野央樹(黄緑5番)【写真:Getty Images】

 数字は右肩上がりの軌道を描いていた。出場試合数。先発回数。そして、プレー時間。トップチームに昇格した2013シーズンからすべての部門を順調に伸ばし、4年目だった昨シーズンはそれぞれ23試合、20回、1754分間をマークした。

 3月12日のジュビロ磐田戦では、待望のプロ初ゴールもゲット。バンディエラ・大谷秀和が不在のときは、左腕にキャプテンマークも巻いた。柏レイソルの心臓部を担う存在となっても、秋野央樹(ひろき)の心に巣食った不安は時間の経過とともに大きくなっていった。

「昨シーズンの途中くらいから、このまま試合に出ていても、自分の伸びしろがそれほどないんじゃないかと感じていた。もちろんレイソルでも伸びないことはないですけど、自分のプレーの幅というものを広げたいと考えたときに、違うチームに一度身を置くべきなのか……いや、置く必要があると思ったんです」

 シーズン終了が近づいたときに、意を決した秋野は強化部へ「一度クラブを出たい」と期限付き移籍を志願した。時をほぼ同じくして、J2降格が決まっていた湘南ベルマーレからオファーが届いた。師走の都内某所。曹貴裁(チョウ・キジェ)監督と面談の場をもった。

 ベルマーレへ期限付き移籍した経験をもつFW武富孝介、柏レイソルU‐12時代からの盟友でもあるMF中川寛斗から、曹監督のことは聞いていた。厳しくて、熱くて、それでいて優しい。大きな背中を誰もが慕い、ついていきたくなる。秋野は思いの丈を訴えた。

「変わりたいんです」

 曹監督はわざわざ用意してきた秋野のプレー映像を見せながら、ベルマーレに与えてほしい武器、ベルマーレで伸ばせる長所、ベルマーレで改善できる短所を丁寧に説明してくれた。

 交渉というよりは、むしろアドバイスに近かった。何度も言葉を交わしているうちに、すべての不安が取り除かれていくのを秋野は感じていた。

「この人のもとでなら自分の可能性はどんどん広がるんじゃないか、自分のサッカー人生を未来から逆算したときに、いまこそベルマーレでプレーすべきなんじゃないかと思えたんです。カテゴリーのところは少し迷うところがあったんですけど、曹さんと話して移籍を即決しました」

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