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Jリーグ 7年前

大卒後シンガポールのMVP経てJ1デビュー。“逆輸入Jリーガー”、新潟・河田篤秀の軌跡

異色のオールドルーキーが、待望のJ1デビューを果たした。FC東京と対峙した7月30日のJ1第19節で、後半26分から敵地のピッチに立ったアルビレックス新潟のFW河田篤秀(24)。セレッソ大阪U‐18への昇格をあえて断り、阪南大学卒業後にはアルビレックス新潟シンガポールで2年間プレー。昨シーズンのシンガポールリーグMVPを引っさげ、いわゆる“逆輸入”の形で完全移籍したJリーガーの、波瀾万丈の軌跡とポジティブな思考に富んだサッカー人生を追った。(取材・文・藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

周囲には遠回りに映るこれまでの軌跡

7月30日のFC東京戦でJ1デビューを果たしたアルビレックス新潟の河田篤秀
7月30日のFC東京戦でJ1デビューを果たしたアルビレックス新潟の河田篤秀【写真:Getty Images】

 味の素スタジアムのゴール裏でウォーミングアップを重ねながら、アルビレックス新潟のルーキー、河田篤秀は心臓の鼓動がどんどん高鳴ってくるのを感じていた。

 前半12分にもぎ取った先制点を何とか死守してきたが、後半21分に追いつかれてしまう。リザーブのなかでフォワードは自分だけしかいない。憧れ続けてきた舞台に、初めて立つ瞬間は必ず訪れる――。そう考えただけで、177センチ、74キロのボディにアドレナリンがあふれてくる。

「早く呼ばれないかな、という気持ちでずっとアップしていたので。思っていたよりも緊張はしなかったですね。むしろお客さんが大勢いたので楽しもうというか、やってやるぞ、一発叩き込んでヒーローになってやるぞ、という思いでピッチに入ったんですけど」

 FC東京のホームに乗り込んだ7月30日のJ1第19節。今シーズンで初めてベンチに入った河田に、呂比須ワグナー監督から声がかかったのは同点とされてから5分後。伝えられた指示は単純明快だった。

「どんどんシュートを打っていいと。それだけだったので、とにかく相手よりもできるだけ多く走って、自由にやろうと。ただ、今日に関しては正直、全然ダメでしたね」

 4分間のアディショナルタイムを含めて、放ったシュート数はゼロに終わった。試合もそのまま1‐1で終了。5月20日の北海道コンサドーレ札幌戦以来、7試合ぶりとなる白星も得られなかった。

 それでも、河田自身は確かなる第一歩を刻んだ。25歳になる年でのJ1デビュー。周囲には遠回りに映るこれまでの軌跡はすべて河田自身が決断し、過去を振り向くことなく歩んできたものだった。

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