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Jリーグ 7年前

神戸・ポドルスキが与える別次元の緊張感。W杯優勝選手と対峙、J1守備陣への相乗効果

デビューから2試合連続ゴールを狙った、ヴィッセル神戸のFWルーカス・ポドルスキ(32)が不発に終わった。敵地・日立柏サッカー場に乗り込んだ5日のJ1第20節で放ったシュートわずか2本、いずれも枠外と精彩を欠き、ヴィッセルも1‐3の逆転負けを喫した。元ドイツ代表の「10番」がもつワールドクラスの左足は、対峙した柏レイソルの若きセンターバックコンビ、中谷進之介(21)と中山雄太(20)のモチベーションをも高め、心技体のすべてで成長を促す相乗効果を早くも生み出している。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

大宮戦で見せつけられたシュートレンジの違い

神戸FWポドルスキ(右)と対峙した柏DF中谷進之介(左)
神戸FWポドルスキ(右)と対峙した柏DF中谷進之介(左)【写真:Getty Images】

 口にするべき言葉を間違えたのか。あるいは、世界と対峙してきたビッグネームに対してちょっと失礼だと思い、慌てて言い直したのか。状況から察すると、おそらくは後者だったはずだ。

 ヴィッセル神戸に逆転勝ちを収めた直後の取材エリア。柏レイソルの最終ラインをけん引する21歳の中谷進之介は、注目を集めていたFWルーカス・ポドルスキに対してこう言及している。

「そこまでマッチアップする場面も多くなかったので。もう少し1対1で仕掛けて……何だろう、けっこうシンプルにプレーする方なので、そこの上手さはあると思いました」

 日立柏サッカー場で5日に行われたJ1第20節。デビューから2戦連発を狙った元ドイツ代表と、レイソルの若きディフェンスリーダーの直接対決は、キックオフから1分とたたないうちに訪れた。

 ゴール前でボールをもち、前を向こうとしたポドルスキを、激しく体を寄せてきた中谷が弾き飛ばした。ファウルを主張するも、主審のホイッスルは鳴らない。軍配は11歳年下の中谷にあがった。

「大宮戦であそこの距離からでも点を取れるところを見せられたので、ゴール前で前を向いたらプレッシャーをかけようということはみんなで話をしていた。とにかく体を寄せて、シュートを打たせないことを意識しました。そこのプレッシャーは、上手くかけられたと思います」

 ポドルスキが鮮烈なデビューを果たした7月29日の大宮アルディージャ戦。叩き込んだ2ゴールのなかでも衝撃を与えたのが、相手に背中を向けた体勢から振り向きざまに決めた後半4分の先制点だった。

 ゴールまでの距離は20メートル以上。ゴールキーパーの加藤順大を含めて、目の前にはアルディージャの選手が6人もいる状況で、迷うことなく全幅の信頼を寄せる利き足の左足を振り抜いた。

 ピッチ上にいた選手、両チームやJリーグの関係者、そしてノエビアスタジアム神戸にかけつけたファンやサポーター。敵味方の垣根を超えた全員が虚を突かれ、度肝を抜かれたことは、VIP席で観戦していたヴィッセルの三木谷浩史オーナー(52)のこの言葉が如実に物語っていた。

「いやいやいや、やっぱりすごいね。あれだけマークされていて、ああいう形で入れる。ペナルティーエリアの外からあれだけすごいシュートを、振り向きざまに決めるのは、なかなかJリーグでは見たことがなかった。Jリーグ全体が盛り上がっていけばいいんじゃないかな」

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