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日本代表 7年前

浅野拓磨、殊勲のゴールも強める危機感。約1年ぶりの先発、確固たる居場所を築くために

text by 藤江直人 photo by Getty Images

歓喜にあふれる試合後に見せた冷静な立ち振る舞い

UAE戦ではボールがゴールラインを割ったものの得点と認められない“幻のゴール”があった
UAE戦ではボールがゴールラインを割ったものの得点と認められない“幻のゴール”があった【写真:Getty Images】

 過去のワールドカップ予選で一度も勝利していない、難敵・オーストラリアから先制した価値ある一発。歓喜にあふれる試合後の取材エリアで、浅野は依然として冷静な立ち振る舞いを見せていた。

「あの場面で入るか、入らないか。結果論の世界で今日は入ったことで、こうやって記者の皆さんに囲んでもらえるようになりましたけど。あれが入っていなかったら、何もなかったかのように忘れられるだけなので、最後の精度をどれだけ上げられるか。今日は結果に結びつけられてよかったですけど」

 記憶の片隅には、1年前の“幻のゴール”が刻まれている。いまでは「負けた」という事実が真っ先に思い出されるが、実は最低でも引き分けにもち込むことができた。浅野自身はそう思えてならない。

 UAE(アラブ首長国連邦)代表を埼玉スタジアムに迎えた、2016年9月1日のワールドカップ・アジア最終予選第1戦。疑惑の判定が飛び出したのは、1‐2のビハインドを背負っていた後半32分だった。

 右サイドからのクロスを、FW本田圭佑(当時ACミラン、現パチューカ)が頭で折り返す。反対側のサイドへフリーで詰めてきたのは浅野。完璧なタイミングで左足を合わせる姿に、誰もが同点を確信した。

 しかし、当たり損ねたのか。威力に欠けた一撃は相手GKに描き出されてしまう。中継したテレビ局のVTR映像では完全にゴールラインを割っていたが、レフェリーはゴールを認めなかった。

 UAEの隣国カタールだったこともあり、いわゆる「中東の笛」ではないかと物議を醸したシーン。なぜサッカーはビデオ判定制度がないのか、という議論にも発展するなかで浅野は自らを責めた。

 テクニックの拙さ。何よりもここ一番におけるメンタルの弱さ。しっかりミートしていれば難なく決められた状況だっただけに、いまでも思い出すたびに悔しさとふがいなさが込みあげてくる。

 敵地バンコクに舞台を移した、5日後のタイ代表との第2戦で先発した浅野は、後半30分にダメ押しとなる2点目を決めている。それでも悔しさを忘れられずに、いま現在へと至っている。

「注目度が高いほど『結果を残そう』と、より一層燃えるものはあります。ただ、常に結果を残すことがどれだけ難しいかもわかっています。次のレベルとしては大事な試合だけでなく、常に結果を残せる選手になること。結果を残すのが当たり前になることが、僕にとっての理想だと思っているので」

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