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Jリーグ 6年前

大宮・石井正忠新監督が挑む「奇跡のJ1残留」。残り3試合で4ポイント差、火中の栗を拾う覚悟

text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie, Getty Images

常勝軍団での経験を背負いながら挑む奇跡

Jリーグ王者として臨んだクラブW杯では、決勝でレアル・マドリーに敗れたものの鹿島を準優勝に導いた
Jリーグ王者として臨んだクラブW杯では、決勝でレアル・マドリーに敗れたものの鹿島を準優勝に導いた【写真:Getty Images】

「連日1時間半くらい、守備の練習を繰り返しました。最終ラインの前に私を含めた3人のボランチが並ぶ形は、イタリアで出来上がりました。ジーコは『守備を徹底することがチームの安定につながる。特にリーグ戦は、守備が強いチームでなければ勝てない』と、オートマチックにコンビネーションを繰り出せるまでひたすら徹底させました」

 当時の練習を『フットボール批評issue18』でこう振り返っている石井監督は、昨シーズンのチャンピオンシップ前に課した練習とこうリンクさせてもいる。

「あのイタリア遠征を経験していなかったら、勝つためにどのようにして点を取るかという発想のもとで、もしかしたら去年も攻撃の練習を課していたかもしれない」

 自他ともに究極の負けず嫌いを認めるジーコは、負けないためにあえて遠回りする形で守備を徹底させた。その過程でジーコの立ち居振る舞いを介して叩き込まれ、いまも石井監督のなかで力強く脈打つのが「勝者のメンタリティー」だった。

「鹿島の勝者のメンタリティーは私が植えつけたのではなく、私も植えつけられてきたものですから、選手たちがそれを感じて変わってくれたらと思っています」

 就任会見前にすでに練習を初めて指導した石井監督は、アントラーズの強さの源泉でもあった、勝負に対する執着心を自らの姿を通して伝えていきたいと力を込めた。

 昨シーズンのチャンピオンシップもフロンターレとの準決勝、レッズとの決勝2戦の合計3試合を決して芳しくなかった下馬評を覆す形で制した。今シーズンも残りは3試合。トーナメントとリーグ戦の違いこそあるものの、負けが許されない短期決戦という意味では変わらない。

「攻撃ではポゼッションはできていると思いますが、時間をかける場面も多くなっているので、シンプルにゴールへ向かう形を多く作っていきたい」

 守備を安定させたうえで、速攻をより多く織り交ぜる。ヴァンフォーレとの直接対決を26日に残していることもあって、希望の二文字は絶対に捨てない。感情が高ぶり、涙するほどの覚悟と決意、そして常勝軍団での経験を背負いながら、石井監督が奇跡に挑む。

(取材・文:藤江直人)

【了】

※インタビューは『フットボール批評issue18』にてお楽しみください。

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