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イタリア、60年ぶりW杯予選敗退の危機。スウェーデンの術中にはまった無惨な姿

10日のW杯欧州予選プレーオフ第1戦。イタリアはまんまとスウェーデンの策にかかり、敵地で0-1と敗れた。W杯優勝4回を誇るアズーリ。国民の不安は怒りとなっている。(取材・文:神尾光臣)

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

狙われたイタリアの精神的特徴

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イタリアが苛立つシーンは何度も見られた【写真:Getty Images】

 プレーオフ第1戦の61分、マルクス・ベリと競り合っていたダニエレ・デ・ロッシが顔を覆ってピッチに倒れた。ベリの肘が入ったようにも見えた。ベンチメンバーを含めたイタリアの全選手、スタッフは激昂し、ジャンピエロ・ヴェントゥーラ監督に至ってはテクニカルエリアを飛び出さんばかりに怒りを露わにしていた。

 ベリはその直前にもジョルジョ・キエッリーニに手荒なチャージを喰らわし、これを流した主審をイタリアの選手たちがいっせいに取り囲むシーンもあった。レオナルド・ボヌッチも試合中に、競り合っていたオラ・トイヴォネンの肘が顔に入ったことを再三アピールしていた(彼は試合後、「鼻骨を折った」と地元メディアに告白している)。

 確かに、スウェーデンは荒かった。マルコ・パローロなどは試合後、地元メディアに「彼らは11人の獣だった」と語った。しかし身体接触がある程度許容されるサッカーというスポーツにおいては、これも試合の流れを制する要素となるのが現実だ。そしてスウェーデンがプレーオフの第1戦でイタリアに勝った要因は、まさにここだった。

 事実、決勝点となるヤコブ・ヨハンソンのゴールが生まれたのは、デ・ロッシに対するファウルでイタリアサイドが激昂した直後の62分だった。スウェーデンのスローインからリスタート、そこから放たれたロングスローに対し、エリア内でキエッリーニがトイヴォネンに前へ入られ、ボールを頭で落とされる。エリア外に落とされたボールには、イタリアの他の選手よりも早くヨハンソンが反応。シュート自体は必ずしもきちんとミートされたボールではなかったが、これがデ・ロッシに当たって軌道が変わり、ゴール右に吸い込まれた。

 「イタリアはよく組織されていて、戦術的にも素晴らしい。だが同時にイライラしやすい。だから敵に徒党を組んで当たって、冷静さを失わせるかが大事だ」。試合前々日、ボローニャに所属しイタリア人をよく知るエミル・クラフトはこう語っていた。事実スウェーデンは、試合開始からイタリアに厳しくプレッシャーを掛け続け、大事な場面で集中力の欠如を誘った。

 なおクラフトは、「(マルコ・)ヴェラッティがキレやすいことは、リーグ・アンを通して仲間たちも知っている。警告累積も迫っているし、トラッシュトークなんかも仕掛けないとね」などと冗談まじりに語っていた。その通りヴェラッティは、試合中にイエローカードを喰らいプレーオフ第2戦の欠場が決まった。つまり、見事に術中にはまったというわけだ。

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