注目すべき収穫は、ピッチ外の部分にこそ
だが、最終的に2つの日本代表チームを勝利に導いたのは、すでに代表チームで確かな立場を固めている2人の選手だった。終了間際の決勝点で勝ち点3をもたらしたのは井手口と岩渕真奈。2010年東アジアカップに16歳で出場して代表デビューを飾った岩渕はまだ24歳だがすでに代表40キャップ以上を記録している。
とはいえ、初戦で特に注目すべき収穫は、ピッチ外の部分にこそあったと言えるだろう。
北朝鮮と他の3つの参加国との関係は、サッカー以外の様々な要素に取り巻かれている。大会主催者は、あくまでも純粋にスポーツのイベントとしてこの大会を取り扱うよう訴えているが、現在の情勢の中で日本が北朝鮮と対戦することの意味について問われたハリルホジッチ監督は雄弁に答えていた。
「我々は政治の話をするためにここにいるわけではない。我々はサッカーを通して友情や心地良さを伝えたいと思っている。両チームの選手たちはお互いに挨拶をして握手を交わしていたし、私も相手と握手を交わした」と65歳の指揮官は語る。
「世界は奇妙なものだが、サッカーをすることでその最高の部分を楽しむことができる。喜びや友情という部分だ。欧州でもアフリカでも日本でも、ライバル関係はどこにでもある。スポーツ界におけるライバル関係は良いものだ。今日の試合でも激しいぶつかり合いは多かったし、荒っぽいプレーもあった。だが誰もスポーツマンらしくないプレーをしてはいなかった。だから両チームを称えたいと思う」
悲しいことではあるが、こういった良識が政治の世界にまで通じることはない。だが残りの試合も友好的に開催されていくのであれば、この大会が果たすべき役割を果たしたと言えるのは間違いないだろう。
(取材・文:ショーン・キャロル)
【了】
★W杯予選まとめはこちら★