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日本代表 6年前

植田直通、右SBで躍動の因果。ベンチでの学びが結実。3年越しの日本代表デビュー

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ハリルも及第点の評価。韓国戦でも出番があるか

 味の素スタジアムのピッチに入場する直前のひとコマ。ハリルホジッチ監督はメインスタンド下でスタンバイしていた植田に近寄り、両手で頬を包み込んでから初陣のピッチへ送り出した。

「最初は難しいかなと思ったが、私が見たいものを見せてくれた」

 試合後の公式会見で植田のパフォーマンスにギリギリながら及第点を与えた指揮官は、さらなる成長を促す思いを込めて、こんな注文をつけることも忘れなかった。

「ボールをもつ相手との距離が遠い時間帯もあったので、できるだけ相手をターンさせない術を身につけてほしい。それでも後半はよりよくなったし、しっかりとした仕事をしていた。オフェンス面でもいい突破があった」

 アントラーズへの入団発表の席で、植田は自らを獰猛なワニにたとえて、チーム関係者や同期入団の選手たちを驚かせた。

「ワニは獲物を水中に引きずり込んで仕留める。自分も得意とする空中戦や1対1にもち込んで、相手を仕留めたい」

 心技体で大きく成長を遂げたいま、ワールドカップに出場する屈強なストライカーたちを獲物として設定するのであれば、アジア最終予選で敗退している中国はやや物足りなく感じたかもしれない。リスペクトの思いを込めながらも、試合後にはこんな言葉も残している。

「今日の相手は来年のワールドカップにはいないし、実際、ワールドカップはもっともっとレベルが上がると思っている。自分たちもいまのレベルじゃ太刀打ちできないと思うので、もっと力をつけていかなきゃダメだと思います。

 次の相手の韓国には身長のある選手がいて、そこをターゲットにするサッカーを仕掛けてくる。自分が出ればしっかりと抑えられる、というところを見せたい。サイドバックでもセンターバックでも、僕がいまもっている力のすべてを出したい」

 ともにワールドカップ出場を決めている韓国代表だからこそ、骨のある相手だからこそ、仕留めがいがある獲物がいる。引き分け以上で、2大会ぶり2度目の優勝が決まる12日の大一番へ。植田は半袖のユニフォームを用意し、闘争心を静かにたぎらせながら出陣のときを待つ。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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