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自分は「谷間の中の谷間」。岩政大樹、独自のキャリアを歩み生まれた自信【谷間の世代と呼ばれて】

シリーズ:「谷間の世代」と呼ばれて text by 元川悦子 photo by Getty Images

異色の元日本代表DFが描く日本サッカーの将来像

 関東1部にはVONDS市原、ジョイフル本田つくば、東京23など強豪クラブがひしめいているが、地域決勝には1チームしか出られない。「日本サッカー界で最も狭き門」と言っても過言ではないほどの難易度の高さなのだ。

 目標達成のために、東京ユナイテッドは岩政を前線のターゲットマンとして起用するなど、さまざまな策を講じてシーズンを戦った。

 台風18号襲来で東京都内が豪雨に見舞われた2017年9月17日に小石川運動場で行われた横浜猛蹴とのゲームでも、前半は岩政が1トップで出場。打点の高いヘッドで再三チャンスを作っていた。

 後半からは本来のDFに戻って後方からチームを統率。終了間際に退場者が出ても声を枯らして指示を出し続け、後半アディショナルタイムの決勝点を引き寄せる。決めたのは岩政ではなかったが、彼がもたらす安心感と存在感がなければ、悪天候に悪ピッチ、数的不利という苦境を乗り切れなかっただろう。

「関東リーグ1部で1シーズン戦って、日本サッカーのエリートじゃない環境を目の当たりにしましたけど、このレベルが上がれば日本全体ももっともっとレベルアップすると痛感しましたね。

 下のカテゴリーの選手に足りないのは『自分で考えてサッカーをする』ということ。日本人はチームとしての約束事や戦術を愚直にやることには長けていますけど、自ら考えてアクションを起こすのは苦手。

 今回の試合も0-0で終盤まで行って退場者が出たことで逆にチームにスイッチが入りましたけど、11対11の状況で誰が何をどう変えていくのか。そこを考えるのがサッカーの本質なんです。

 技術や戦術よりも、個々の判断や決断といった部分の方が重要。カテゴリーが下がるとその不足がより顕著になってくる。そこを改善していくことが、日本を強くすることにつながると僕は思います」

「人と違う生き方」に強くこだわる岩政があえて違った目線から見たものは、必ずや日本サッカーの未来に活かされる。

 2018年も東京ユナイテッドの一員としてプレーしながら下部リーグからの底上げを図っていくつもりだが、日本代表から関東リーグまで幅広くサッカーを見てきたこの男にできることは少なくないはず。岩政らしい独自性を大事にしつつ、異彩を放ち続けてほしいものだ。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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