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Jリーグ 6年前

カギ握る内田篤人。アントラーズが取り戻すべき“鹿島らしさ”。まさかの無冠からの逆襲へ

前人未踏のリーグ3連覇を知るDF内田篤人(前ウニオン・ベルリン)が、7年半ぶりに復帰したことでオフの注目を集めた鹿島アントラーズ。上海申花(中国)と1‐1で引き分けた、14日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ初戦では内田が移籍後初の先発フル出場を果たした。まさかの無冠に終わった昨シーズンからの捲土重来を期す常勝軍団のなかで、日本代表としても活躍した29歳の右サイドバックは、すでにさまざまな相乗効果をもたらしている。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「内田選手が入ってくるんですか?」

ACL初戦となった上海申花戦でフル出場したDF内田篤人
ACL初戦となった上海申花戦でフル出場したDF内田篤人【写真:Getty Images】

 内田篤人が鹿島アントラーズに復帰するらしい――ドイツ発の未確認情報が、日本サッカー界にも伝わっていた昨年末のある日。アントラーズの強化責任者に就いて実に22年目のシーズンを終えようとしていた、鈴木満常務取締役強化部長(60)は東京都内にいた。

 完全移籍のオファーを出していた、東京ヴェルディのDF安西幸輝(22)との交渉の席。J1最終節で優勝をさらわれた川崎フロンターレを含めて、複数のJクラブが獲得に乗り出していたホープは、鈴木常務取締役にこう問いかけてきた。

「内田選手が入ってくるんですか?」

 ヴェルディ時代の安西は、左右のサイドバックおよびアウトサイドを主戦場としていた。内田が復帰すれば、右サイドバックでポジションがかぶる。ブンデスリーガ2部のウニオン・ベルリンとの交渉が大詰めを迎えていたなかで、間もなく発表されるであろう事実に対して曖昧な答えは返せない。

「そのときは『多分』という話をしました。ネガティブな言葉が帰ってきたらどうしようと思っていたら、安西は『ぜひ獲ってください。一緒にプレーしたいんです』と言ったんですよ」

 小学生年代のジュニアからヴェルディひと筋で育った安西は、ジュニアユースの卒業を間近に控えていた2010年に、サイドハーフからサイドバックへ転向している。潜在能力を見抜いたのは、炎の左サイドバックとして日本代表に一時代を築いた、ヴェルディOBの都並敏史氏だった。

 そのときから、アントラーズから移籍したブンデスリーガの古豪シャルケと日本代表の両方で輝きを放っていた内田が、安西にとっての憧れの存在となった。だからこそポジション争いが激しくなり、たとえベンチに座る時間が多くなっても、アントラーズへ移籍することを決めた。

 同じ思いを、静岡学園高校から加入して6年目のシーズンを終えようとしていた伊東幸敏(24)も抱いていた。2017シーズンは24試合、1036分間とともに自己最多をマークした右サイドバックは、高校時代から同じ静岡県出身の内田の背中を追いかけてきた。

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