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Jリーグ 6年前

広島・川辺駿、アジア王者を翻弄。帰還した男に芽生えた中心選手としての自覚

text by 青木務 photo by Getty Images

抜け目ない動き出しでゴールに絡む

 66分に訪れた同点ゴールは、ボールを呼び込む川辺の動きがきっかけとなった。セットプレーのキッカーを務める背番号36はこの直前にFKを蹴ったが、相手GKに難なくキャッチされている。

「苦手なんですよ。だからもっと練習しないといけない。あれだけ蹴る機会があったら。中の選手も強いし、それを考えるともっといいボールを上げなきゃなと思っている」

 そう言って苦笑いを浮かべたが、このキックの20秒後に大仕事をやってのける。

 浦和の守護神・西川周作は、ボールを捕球すると素早く投げて攻撃をスタートさせたが、青山敏弘が寄せて広島が右サイドでスローインを得る。そして、中盤にぽっかりと空いたスペースにスルスルと侵入したのが川辺だった。

 ワンタッチで前を向くと、そのままドリブルで持ち込む。PA内では名手・阿部勇樹に対応されながら粘り強く折り返す。懸命に足を伸ばした西川にブロックされるも、こぼれ球を柴崎晃誠が豪快に蹴り込んでネットを揺らした。

「やっぱり周りが反応してくれるので、預けることもできるし、前にスペースがあったら自分でも仕掛けられる。ゴールまで持って行くという選択肢ももちろんある」

 川辺はこう振り返る。FKを蹴ってからスローインをもらうまで、彼は誰にもマークされていない。一度プレーが切れても集中を保っていたからこそ、空いたスペースに無駄なく入り込むことができたのではないか。

 何より、顔を出せばパスが出てくると信じているからこそ動きが止まらなかった。右サイドハーフでスタートした前半から繰り返してきた、ボールを呼び込む動きが実を結んだと言える。

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