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Jリーグ 6年前

広島・城福監督が称賛した工藤壮人。ノーゴールの「背番号9」が果たした大きな役割

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

「ワンチャンスにかける集中力をもっと持たなきゃいけない」(工藤)

 唯一にして最大のチャンスは53分に訪れた。城福監督が始動時から厳しく求めてきた、激しい守備からボランチの稲垣祥が自陣の中央で相手ボールを奪取。センターサークル付近にいた工藤が左サイドを駆け上がってきたMF柏好文にパスを落とし、一気呵成のカウンターを発動させた。

 ペナルティーエリア付近までドリブルで攻め込んだ柏が選択したのは、中央のFWパトリックではなく、ファーサイドをフリーの状態でフォローしてきた工藤へのパスだった。先制する千載一遇のチャンスで、描いていたビジョンがわずかに狂ったと工藤は残念そうに打ち明ける。

「欲を言えば足元でボールをもって、相手ディフェンダーとキーパーのところで駆け引きがしたかったんですけど。ちょっとボールが流れてしまったので、ディフェンダーが足を出してくれ、という駆け引きに変えて、その股下を狙ってファーサイドに流し込もうと思ったんですけど」

 瞬時に描き直した青写真通りに、慌ててマークにきたDF車屋紳太郎は右足を上げながら対応してきた。しかし、わずかながら力んでしまったのか。大きく開いた車屋の股間を狙った工藤のシュートは、車屋の右足に当たって弾き返されてしまった。

「ワンチャンスにかける集中力というのは、もっともっと持たなきゃいけないと思いました」

 これが唯一のシュートとなった。前半から守備で献身的に走り回っていた疲労を考慮され、陣形を「4‐4‐2」から「4‐2‐3‐1」へ変えて攻勢を強める狙いが込められた城福監督のさい配のもとで、工藤はシュートから6分後にトップ下の川辺駿との交代を告げられた。

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