勝つためにリスクは冒したが…
シーズン後半戦のユベントスは、4-3-3システムのもとで守備の安定化を図っていた。しかしこの一戦ではシステムを4-2-3-1に戻し、ボール奪取に活躍していたブレーズ・マテュイディもあえて外した。「マドリー相手にはどのみち点は取られる。ならば攻撃力を追求したかった」と指揮官は試合後に理由を述べた。
もっとも、結果は見ての通り。確かに組織的なプレスからボールを奪って、スペースへ素早くパスをつなぐ組み立ては機能していた。そして出場停止のミラレム・ピャニッチに代わりレジスタに抜擢されたロドリゴ・ベンタンクールも、攻守両面で良いプレイを見せていた。だが前線の選手たちはゴール前で沈黙した。両サイドに展開しても正確な折り返しが入らず、その一方でゴンサロ・イグアインやパウロ・ディバラはフリーで仕事をさせてもらえなかった。
一方でそれを受け止めるマドリーの守備陣には余裕があった。両センターバックとそれをフォローするカゼミーロは、攻め込まれても、ペナルティエリア内を粘り強く守った。そして前述の通り、彼らの前線には絶対的なエースが構える。攻撃力と守備における安定感の両方が保証されていたのである。
「こういった試合では経験が重要となる。ミスを犯さず、逆に相手のミスを着実に突くことが必要だ」
前日の記者会見でルカ・モドリッチが語った言葉が改めて重い。技術も身体能力も、個々の戦術理解も高いマドリーには、さらにチームとしての経験が備わっている。アッレグリには、そこまで視野に入れた上での戦力差が見えていたのかもしれない。だがリスクを冒して戦った結果、安定感の欠如をC・ロナウドに突かれることとなった。
まだ2ndレグがある。とはいえ、ホームで0ー3は痛い。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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