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Jリーグ 6年前

マリノスの「伝統」と「革新」の象徴として。18歳のルーキー・山田康太の大いなる可能性

text by 舩木渉 photo by Getty Images for DAZN

突如言い渡されたサイドバックでのプレー

 もちろんサイドバックはおろか、最終ラインに入ることすらサッカー人生で初めて。そんな状態で本人も「今日(3月13日)の練習に来るまでは全然想像していなかった」と語るほどだった。「対人やカバーリングに苦手意識はなくて、守備に不安はない」と話していたものの、ほとんどぶっつけ本番でのサイドバック起用だった。

 そして迎えた3月14日の仙台戦。相手に退場者が出たとはいえ、山田は見る者が想像した以上のパフォーマンスでサイドバックをこなした。常に高い位置をとってインサイドとアウトサイドのポジショニングを使い分けつつ、ゲームメイクからオーバラップまで積極的な攻撃参加で決定機にも絡んだ。

 試合後には「やっぱりまだ慣れていなくて(サイドバックの)感覚は掴めていなかったですけど、思ったより、事故のような大きな問題もなく終われたのは少し自信になった」と山田はサイドバックとしての手応えを語っていた。

 とはいえ、このルーキーのサイドバック起用は一時的な処置だと思われていた。もともとルヴァンカップのグループリーグ第1節のFC東京戦でDF栗原勇蔵が負傷したことでセンターバックの選手層に不安が生まれ、その試合の途中から本来サイドバックのDF金井貢史が中央にスライドした。そして金井は仙台戦も同様にセンターバックでプレーする見込みになっていた。

 それに加えてリーグ戦で右サイドバックに入っていたDF松原健にも連戦の中で無理をさせられない状況ということもあり、穴埋めとして山田が抜てきされた。賢さと柔軟性を兼ね備えたテクニカルなMFだっただけに、フィジカル的な部分さえクリアできればサイドバックは問題なくこなせるだろうと予想してはいたが、これが思わぬ方向に転がっていく。

 仙台戦で好パフォーマンスを披露した山田は、その後もルヴァンカップでは継続的に右サイドバックとして起用されるようになった。普段の練習でも右サイドバックに入ることが多くなり、徐々に経験を重ねていく。

「やっぱり1年目とか関係なく試合には出たい。このチームではルヴァンカップがそう簡単に出られる大会じゃなくなっている中で、サイドバックですけど監督が置いてくれているということは、少なからず監督が日々の練習から自分のプレーとかを評価してくれていたんだと思うし、何か意図があって自分が使われていると思う。今後も『サイドバックで出るぞ』となったら全然出たい」

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