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日本代表 6年前

本田圭佑、西野Jの新布陣で覚醒も。ぶっつけ本番どんと来い…南アW杯で輝いた経験の意味

text by 元川悦子 photo by Getty Images

「南アW杯の状況にちょっと近い」

 実際、27日のゲーム形式の練習でも、後ろに重心がかかりすぎて前線にボールが来ないため、本田がボランチの位置まで下がる場面が頻繁に見られた。そうすれば確かにパス回しはスムーズになるかもしれないが、全体のバランスは崩れがちになる。万が一、危険な状況でボールを奪われてしまったら、速攻から失点を食らうリスクも高い。そのあたりの判断を含めて、限られた時間で明確な解決策を見出さなければならない。

 こうした作業は非常に難易度が高いが、本田には手探り状態で挑んだ新ポジションを短期間でモノにした過去がある。それは2010年南アフリカワールドカップの1トップ。グループリーグ初戦のカメルーン戦(ブルームフォンテーヌ)での値千金の先制弾が日本と彼自身の命運を大きく変えたのは周知の事実だろう。

 8年前を振り返ってみると、本田が1トップに入ったのは、グループリーグ初戦4日前のジンバブエ戦から。日本代表が阿部勇樹(浦和)をアンカーに据えた4-3-3にシフトしたのも本大会2週間前だッタことを考えれば、いかに突貫工事だったのかよく分かるだろう。

 1トップに入った23歳の本田は「見える景色が違う」と言っていたが、違和感をもろともせず、瞬く間に結果を出してしまった。その勝負強さには誰もが舌を巻いた。育成年代から数多くのポジションをこなしてきた本田には監督の要求に応えられる適応力と柔軟性が備わっていた。それがプラスに働いた部分もあったはずだ。

「前々回(のワールドカップ)も(チームが)ジタバタしても仕方ない状況だったんで、覚悟を決めてとにかく冷静に入ることだけに集中した。今回もそれにちょっと近い。シチュエーションは違うんですけど、ジタバタしてる状況にあるのは間違いない。そこで焦ってもプレッシャーを感じても仕方ないんで、今は落ち着き始めています。

 これまでは結果的にたまたまビッグゲームで結果を出してきて、ホント運がよかった部分もあるけど、それはずっと求めてたから結果が出せたという自負もある。今回も一発目のシュートで決まる気もするし、そういうのを決めないと話にならない。緊張感をこのまま維持して、自分のペースで準備を進めていけたらと思ってます」

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