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日本代表 6年前

情報はオープン、練習場にファン殺到。選手と意見交換も活発に。西野流マネジメントは吉か凶か

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ポジティブなイメージを広めていく意味合いも

 翻って今合宿は、あらゆる角度から見られているという感覚もあり、どことなく弛緩した雰囲気が漂っていた。もしかすると、集中力がそがれる瞬間もあったかもしれない。非公開形式に慣れていた選手たちの思いを代弁する形となった吉田は、一方でこんな言葉を紡ぐことも忘れなかった。

「でも、子どもたちが日本代表のサッカーを見る機会というのは、それほど多くあるわけではないと思いますので。秋津周辺の方々は、非常にラッキーだったんじゃないでしょうか」

 それぞれの所属チームにおける活動がバラバラだったこともあり、招集されたすべての選手が顔をそろえたのは5日目の25日だった。それまでは必然的に、練習内容もコンディションを調整するメニューが大半を占めていた。

 たとえば初日から参加した本田圭佑(パチューカ)や香川真司(ボルシア・ドルトムント)らの海外組が、ボールを使ったメニューを消化する。対照的に5月19日と20日のJ1を終えて、短いオフをはさんで合流した国内組がピッチの隅でコンディション調整に励んでいる。

 こうした状況を考えれば、練習を全面公開としたのも当然の流れかもしれない。ましてやここ半年間の日本代表は、国際Aマッチで低空飛行を続けていた。宿敵・韓国代表に惨敗した昨年末のEAFF E-1サッカー選手権では、スタンドから痛烈なブーイングがわきあがったほどだ。

 そこへ、選手たちとのコミュニケーションや信頼関係がやや薄らいできた、という不可解な理由で指揮官が交代した。ロシア大会の開幕まで2ヵ月半と迫っていたなかでの緊急事態は、ネガティブなイメージをさらに増幅させた。実際、西野朗監督も今合宿中にこう語っている。

「代表チームの活動、試合というものがあまりいい形で発信されてない。関心が少し薄れたというか、代表チームがどうなのか、というようななかでワールドカップを迎えるわけなので」

 練習の全面公開には、ポジティブなイメージを広めていく意味合いも込められていたと見ていいだろう。ただ、新たに導入される3バックを含めて、戦術的なトレーニングが開始された26日以降は、西野流マネジメントにおけるプラス効果も幾度となく見て取れた。

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