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本田圭佑こそ日本が誇る最大の武器。偶然でない勝負強さ、技術や理屈を超えた命がけの迫力【西部の目/ロシアW杯】

 その左足で数々のドラマを生み出してきた本田圭佑。コロンビア代表とのワールドカップ初戦でのスタメン出場の可能性は低いかもしれない。しかし得点がほしい時、本田ほど頼りになる選手はいない。「ここぞ」の場面でゴールネットを揺らしてきた32歳は、日本が誇る武器である。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

日本に本田以上の「エクストラキッカー」はいない

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本田圭佑【写真:Getty Images】

 ある会議の後、新しい大会公式球を手にしたフランツ・ベッケンバウアーは「ちょっと、あそこへ入れてみようか」と言うと、会議室の隅にあるゴミ箱へポーンとボールを蹴り入れた。出席者から盛大な拍手が贈られたのは言うまでもない。スーツと革靴での高精度キックといえば、かつてJリーグの試合でベンチから飛び出すなりボレーのロングシュートを決めたドラガン・ストイコビッチは忘れがたい。

 2つのエピソードには、現役を退いても錆び付かない技術、一発で成功させる特別なオーラを感じさせる。

 サッカーで決定的なプレーをする選手は、「エクストラキッカー」とも呼ばれる。特別なプレーヤーは南米では「クラッキ」、イタリアなら「ファンタジスタ」。エクストラキッカーがエクストラドリブラーでもエクストラランナーでもないのは、サッカーで何らかの成果をもたらすのはキックだからだろう。

 ヘディングを除けば攻撃はキックで終わる。そこまでの過程がどんなに素晴らしくても、結果を出すのはキックだ。決定的なパス、クロスボール、FK、ミドルシュート…すべてはキックで決まる。ドリブルで3人抜いても最後のシュートが外れる選手はエクストラキッカーとは呼ばれない。

 本田圭佑の武器は左足のキックだ。ボールコントロールもドリブルも上手いが、本田が特別なのはキックに精度とパワーがあるから。この点で日本に本田以上のエクストラキッカーはいない。本田より速い、上手い、賢い選手はいても、結果を叩き出せる可能性において本田の左足は最も期待値が高い。

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