フットボールチャンネル

代表 6年前

ドイツが無残に散った5つの敗因。誤った戦術、拭えなかった慢心。絶対王者はなぜ墜ちたのか【ロシアW杯】

text by 本田千尋 photo by Getty Images

FWにゴールなし。真価を発揮できなかった若きストライカー

ティモ・ヴェルナー
昨年のコンフェデ杯得点王のヴェルナーは初の大舞台で無得点に終わった【写真:Getty Images】

 続いて3、「ゴールのないFW」。ロシアの地でドイツ代表が挙げた総ゴール数は、たったの2つ。決めたのはスウェーデン戦で同点弾を叩き込んだマルコ・ロイスと、後半のアディショナルタイムに勝ち越し弾を突き刺したトニ・クロースだ。FWのティモ・ヴェルナーとマリオ・ゴメスは無得点に終わった。特に昨年のコンフェデ杯で得点王に輝いたヴェルナーは、初の大舞台でポテンシャルを発揮できずに終わった。『エクスプレス』電子版は、次のように指摘している。

「過去のワールドカップのトーナメントでは、ドイツは常にミロスラフ・クローゼ、ルーカス・ポドルスキ、またはトーマス・ミュラーのようなゴールを脅かすアタッカーを頼ることができた。このことは今回は完全にチームから欠けていた」

 確かにロシアのチームには、ポドルスキもクローゼもいなかった。だが、ミュラーはいた。いたが、所属先のバイエルン・ミュンヘンで発揮してきたような勝負強さは「完全にチームから欠けていた」。

 『ケルナー・シュタット・アンツァイガー』電子版は「チャンピオンズリーグの準決勝でレアル・マドリーに敗れた後でバイエルンの選手たちは明らかにフットボールの昏睡に陥った」と記している。そして「その象徴がトーマス・ミュラー」なのだという。いわゆる燃え尽き症候群のような状態だろうか。同電子版が指摘するように、本大会でミュラーはピッチ上から消えていた。ここぞという時に決めてくれるFWが、ロシアのチームにはいなかった。

 そして4、「慢心」。27日付の『シュピーゲル』電子版は、ワールドカップ敗退が決定して間もないレーブの「最初の分析」とするコメントを引用する。

「チームはなんらかの方法で軽やかさを欠いた。我々のコンビネーションの流れ、確実性はただ単に足元になかった。我々はそれをピッチ上に持ち込むことができず、ダイナミックにプレーすることができなかった」

 そしてメキシコ戦の前にレーブ監督は、加えて「確かな慢心」を感じたという。『エクスプレス』電子版によれば、指揮官はこのことについて度々警告していたのだそうだ。「にもかかわらず代表チームは世界王者の名声を振り払うことができなかった」。

 ワールドカップを制したことによって得られる栄光は、それを獲得するのが圧倒的に困難であるが故に、抗い難い魔力のようなものなのだろうか。大会前に「世界王者の名声」を捨て去って一介の挑戦者に戻ることなど、ドイツ代表の選手たちも、ひとりの人間として出来るはずがなかったとも考えられる。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top