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日本代表 6年前

日本が世界で勝つために必要なことは? キーワードは“数学”。最先端理論をどう活用すべきか

日本代表はロシアワールドカップでベスト16に終わった。高い壁だったベスト8に片手をかけたところで蹴落とされ、世界に歴然たる差を見せつけられた。今大会で上位進出国とそうでない国との間に見られたギャップをどう埋めていくべきか。そこに日本サッカー発展の鍵が隠されているはずだ。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ワンマンチームの凋落から見えたトレンド

フランス代表
ロシアワールドカップはフランスの優勝で幕を閉じた。彼らの強さはチームとしての総合力と結束にあった【写真:Getty Images】

 ロシアワールドカップは数多くの名勝負が生まれ、歴史に残るエキサイティングな大会だったのではないだろうか。

 しかし、戦術的な革新があったわけではなかった。スペインのパスサッカーが猛威を振るった2010年南アフリカ大会や、より守備に重きを置きながらゴールに直線的に向かうサッカーにシフトした2014年ブラジル大会のような、尖った傾向は見られず。キーワードは「バランス」だった。

 多くのチームが守備時には4-4-2や4-1-4-1、5-4-1のブロックを敷いて、組織的に守り、ゴールに対して速く効率的に向かっていく。優勝したフランスはスター選手揃いにもかかわらず全員がチームプレーを厭わず、強固な守備からのカウンターを武器にしていた。クロアチアやベルギーは対戦相手に合わせた柔軟性を持っていて、イングランドもチームとして手堅く勝つための術を身につけていた。彼らだけでなく、日本など他の多くの国も攻守のバランスを意識したチーム作りをしていた。

 逆に「ワンマンチーム」と言われるような、強みが偏ったチームは苦戦を強いられた。例えばアルゼンチンは、リオネル・メッシが絶対的な中心で、彼が動かなければ周りは動かなかった。するとグループリーグ初戦のアイスランド戦で、初出場国に抑え込まれてしまった。ストロングポイントがわかりやすくなることで、相手にとっても対策が立てやすく、そのための材料が揃いやすかったことも彼らの苦戦と早期敗退に影響しているだろう。
 
 テクノロジーの発達によってデータ分析やスカウティング技術が向上し、今大会は各チームに提供されたタブレット端末でリアルタイムデータをベンチにいながら参照できるようになった。自分たちのことも、相手のことも知るという点において、平等なクオリティが保証された中で、上位に進出したチームとそうでないチームに生まれた差は何だったのだろうか。

 サッカーは「数学」に近いと、常々思っている。ゴールを奪うことを「解」とするならば、そこに至るまでの過程の「解法」をいかに導き出し、選択肢をいくつ持つことができるか。これがチーム力の差となってピッチ上に現れたと解釈できないだろうか。

 数学では、それぞれの問いに対する答えは1つでも、「解法」は複数存在する場合が多い。そしてそれらの「解法」は、自分が過去に身につけてきた「定義」や「定理」「公式」といったものを応用し、組み合わせることで成り立つ。

 1つの「解」に対して「解法」が存在する場合、そこに至るまでの過程は全て論理的に説明できるようになっている。これはゴールを奪うまでのプロセスを、ピッチ上の現象と選手の判断によって説明できるサッカーと似ているのではないだろうか。

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