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Jリーグ 6年前

マリノス、連敗脱出への処方箋。川崎Fの重鎮が語る前半戦との違い、取り戻すべき誇り

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「ノーマルプレス・ノーマルライン」

中村憲剛
中村憲剛はマリノスのサッカーを「ノーマルプレス・ノーマルライン」と表現した【写真:Getty Images】

 フロンターレのMF中村憲剛は、マリノスとの今季2度目の対戦を終え、前回との比較も含めてピッチ上での感覚を次のように語っていた。

「前半戦はかなり攻撃に偏っている、すごく斬新な戦い方をしているなというイメージは正直ありました。今回は(FC東京戦とサンフレッチェ広島戦で)大量失点しているので、人も替えてきましたし、守備もそこまで前から来るわけではなく、ハイラインでもなく、という感じだったので、ポステコグルー監督の意識がちょっとマイルドになったイメージはあります。前の方がもうちょっとトンガっていたなという気はします。そういう意味では戦いやすかったし、人も替わっていたから突きやすいところもありました」

 前節浦和レッズ戦に敗れていたフロンターレは、上位戦線に残り続けるためにも、マリノスに勝っておかなければならなかった。今年4月に対戦した際、中村憲剛は「前半で試合を決めようと入って、その狙い通りに、相手の最終ラインをズタズタに、やりたい放題やっていた。自分も含めて決めないと、こういう試合になる。やはりそのツケは後半にくる」と、決め手を欠いたプレーを悔やんでいたが、その経験も踏まえて、前半からマリノスのパスワークを断って攻め勝つ道を選んだ。

 するとどうか。彼らの狙い通りにマリノスはボールを取り上げられ、珍しくボール支配率は50%を切って、手も足も出なかった。「相手が嫌がることをして、自分たちがやるべきことをやって勝つ」というフロンターレの基本姿勢にブレはない。この試合でマリノスはベースの差を見せつけられてしまった。

 ポステコグルー監督が志向するサッカーは、基本的にボールを握っている状態での戦いを想定して組み立てられている。一方で、ボールを握れなかった場合の対処法をほとんど持っていないのが実情と言って差し支えないように思う。

 昨年までのマリノスは1試合平均1失点を切るほどの堅守が武器で、低い位置にブロックを敷いて粘り強く守りきるという戦いを得意にしていたが、大きな方針転換の中で何かが失われてしまったのだろうか。中村憲剛は「ハイプレス・ハイラインじゃなかった。割と『ノーマルプレス・ノーマルライン』で、逆に穴が空きすぎていた」と分析したが、これまでの「普通」で守りきれなくなっている現実は重くのしかかる。

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