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Jリーグ 6年前

遠藤航が描いたサッカー人生の未来予想図。念願の海外移籍、原点となった湘南での日々

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ベルギー移籍。そして欧州デビューへ

遠藤航
次なる戦いの場はベルギーへ。遠藤航の挑戦はまだまだ続く【写真:Getty Images】

 2015シーズンのベルマーレは年間総合順位で8位と躍進し、悲願でもあったJ1残留を堂々と勝ち取った。迎えたオフ。2年続けてレッズからオファーが届いた。ペトロヴィッチ監督からは再び熱い言葉で口説かれた。成長へのステップを考えたとき、断る理由は何もなかった。

 夏場にはリオデジャネイロ五輪が開催される2016シーズン。23歳の遠藤を、ベルマーレ関係者は「違約金の設定は大丈夫か」という言葉とともにレッズへ送り出している。ロシアワールドカップが開催される2018年は25歳。「そのころには海外に行かなきゃダメだぞ」と背中を押された遠藤は、笑顔を浮かべながらこんな言葉を返したという。

「(違約金の)ハードルは大丈夫です。そこはいろいろと考えてもらいました」

 レッズのユニフォームに袖を通したときには、J1で優勝争いを演じる、ACLを戦う、ロシアワールドカップで日の丸を背負って戦うという項目も設計図に書き加えられていたはずだ。

 鹿島アントラーズにまさかの苦杯を舐めたものの、2016シーズンはJリーグチャンピオンシップ決勝の舞台に立った。2017シーズンはアジアを制して歓喜の雄叫びをあげた。ペトロヴィッチ監督の解任とともに最終ラインも3枚から4枚に変わり、遠藤のポジションも右サイドバックが多くなった。

 それも違和感なく務められたのは、自ら描いたサッカー人生の設計図をしっかりと歩んできたなかで作られた引き出しの中身が豊富だった証でもる。守備のマルチプレーヤーとして認められたからこそ、ロシアワールドカップでベスト16に進出した西野ジャパンにも名前を連ねた。

 大会後に届いたベルギー1部のシント=トロイデンからのオファーは、遠藤にとっては青天の霹靂に感じられたはずだ。移籍を決めた際にはレッズの公式サイトを通じて「ファン・サポーターのみなさんには突然の報告になってしまい申し訳ありません」と偽らざる思いを綴っている。

 それでもロシアの地で一度もピッチに立てなかった悔しさが、設計図に描かれていた「海外移籍」を後押しした。交代出場からわずか2分後に同点ゴールを決め、強豪ヘンクから勝ち点1をもぎ取る鮮烈なデビュー戦で任されたポジションはインサイドハーフだった。

 未知のポジションながら、ボックス・トゥ・ボックスをタフに走り回る動きは、3バックの右や右サイドバックでも求められた上下動にも通じる。サッカー人生の設計図を常にアップデートし、目指すべきステージを高く設定し続ける遠藤の意識の高さに導かれたゴールでもあった。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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