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Jリーグ 6年前

マリノスが失った金井貢史という太陽。万能性だけでない稀有な存在価値、仲間たちに託した道標

text by 舩木渉 photo by Getty Images

金井貢史はマリノスの太陽だった

 おそらくマリノスの選手たちも、その活躍に刺激を受けているだろう。移籍直後には栗原が「仲間でありライバルでもあったから、どういう形であれ彼が抜けて自分としては少なからずチャンスは回ってくる可能性もあるし、そういう時に『貢史がいなくちゃダメだった』と思われないように頑張らなきゃダメ」と言葉に力を込めていたが、他の面々もそれぞれが胸に熱い思いを抱いたはずだ。

 吉尾は「次は仲間としてではなく、相手として成長した姿をピッチで見せられるように。貢史くんを自分が抜いてゴールを決められるように努力し続けたいと思います。あとは自分しだい。貢史くんはピッチでずっと待っていてくれると思うので、すぐ追いつけるように頑張りたい」と目を輝かせていた。

 そう、再戦の機会はすぐにやってくるのである。15日にマリノスと名古屋は、金井にとって思い出深い場所に違いない日産スタジアムで対戦する。やたらと声の大きい“13番”が左胸のトリコロールのエンブレムを叩く姿はもう見られない。“31番”を背負って、古巣相手に恥ずかしい姿は見せられないと死に物狂いで向かってくるはずだ。

 金井はマリノスにとって、いつもどこかでエネルギーを生む太陽のような存在だった。溌剌とした振る舞いでチームを明るく照らし、見えないところでも別の場所をまばゆい光で暖めている。だが、今はもう新横浜のロッカールームにも、練習場にもその姿はない。きっと名古屋でも、すでに欠かせない活力源になっているだろう。

 ピッチ上ではチームを常に支える縁の下の力持ちで、ピッチ外では傑出したムードメーカーであり、後輩思いの良き先輩でもあった金井貢史。マリノスにとって“太陽”が去ったことによる損失は見た目よりもずっと大きいかもしれない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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