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Jリーグ 6年前

久保建英に降りた“神様”。「急がば回れ」はいらない。自らの成長へ下した決断とプロの決意

text by 藤江直人 photo by Getty Images

横浜FMへの移籍を決意させた柏戦

 昨シーズンまでと同じく、FC東京がU-23チームを参戦させているJ3を主戦場とし始めて久しい7月。トップチームのヘッドコーチを兼任する安間貴義監督は、久保に対してこう言及していた。

「トップチームのサイドハーフは、強度がものすごく高いプレーをしなければならない。長谷川監督の下で久保はいま、守備の基本を教わっています。トップチームの試合になかなか出ていないので、どうしたんだと思う方もいるはずですけど、彼は確実に強くなっています」

 6月にはU-19日本代表の一員としてロシアへ遠征し、ワールドカップ・ロシア大会を戦った西野ジャパンと同じ時間を共有した。四六時中一緒ではなかったが、それでも開幕前の芳しくなかった下馬評を覆し、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を決めた過程を目の当たりにした。

 ロシアから帰国後の6月29日。藤枝MYFCとの明治安田生命J3リーグ第16節へ向けて前泊していた藤枝市内のホテルで、ミーティングを開催した安間監督は久保にロシアからの土産話を求めた。

「久保は最初に、誰が上手いとか誰がすごいとかではなく、岡崎選手と武藤選手の攻守の切り替えの速さが半端ない、という話をしたんですね。そういうところに着目すること自体が、いままでの彼にはなかったこと。もうちょっと待っていただけると、おそらくJ1でも再び試合に出られると思います」

 現地のスタンドで観戦したコロンビア、セネガル両代表戦でゴールを決めたMF香川真司、FW大迫勇也、MF乾貴士、そしてMF本田圭佑ではなく、合同練習や練習試合で実際に肌を合わせたFW岡崎慎司やFW武藤嘉紀が見せた「泥臭さ」に目を奪われた。

 意識が変わる過程にいたはずの久保だったが、J1が再開された7月18日の柏レイソル戦で、さらに非情な現実に直面した。当時のFC東京は前田遼一と永井謙佑が故障中で、レイソルから期限付き移籍中のチーム得点王ディエゴ・オリヴェイラも契約上の理由でベンチ入りできなかった。

 新加入のリンスが出場できるのも次節からと、FWの枚数が圧倒的に足りない状況を受けて久保も5試合ぶりにベンチ入りした。しかし、先発の2トップは富樫敬真とボランチが本職の高萩洋次郎。後半途中からルーキーの矢島輝一も投入された一方で、久保には最後まで声がかからなかった。

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