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Jリーグ 6年前

久保建英に降りた“神様”。「急がば回れ」はいらない。自らの成長へ下した決断とプロの決意

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「これからは久保君ではなくて、久保建英で」

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イニエスタの眼前で見せつけた大器の片鱗【写真:Getty Images】

 ゴールを決めた久保が、ポステコグルー監督の胸へ飛び込んだ理由がここにある。そして、覚悟と決意を抱いてマリノスの一員になったことは、新天地の先輩たちにも伝わっている。

「ちょっとピッチを離れると可愛らしいというか、高校生のあどけなさが残っていますけど、日々の練習にはすごく真剣に取り組んでいますし、強い気持ちで来た、というのは感じます」

 松原が笑顔を浮かべれば、久保が生まれた2001年は横浜F・マリノスユースの最上級生だった34歳のベテラン、DF栗原勇蔵も「ああいう場面で点を取れるのは持っているよね」と目を細める。

「17歳とは思えないほど堂々としているし、はっきりと物事を言えるのは本当にたくましい。スペインにずっと住んで、サッカーをやってきただけはあると思いますよね」

 もっとも、ヴィッセル戦で放ったシュートは1本のみ。64分にベンチへ下がるまで「違い」を見つけたのはゴールシーンのみで、フィジカル勝負に持ち込まれればなかなか前を向けない。課題とされる守備の部分でも、特に前半は勢い余ってファウルを取られる場面が連続した。

「こんな早いタイミングでゴールできて、移籍してからいいこと続きですけど。これがビギナーズラックにならないように、頑張らないといけない」

 ゴールは確かに嬉しい。だからといって、いつまでも感慨に浸っているわけにもいかない。サッカー人生のプロローグにすぎないことを誰よりも理解している久保は、自らの足元を見つめ直すことを忘れず、さらには取材対応を終えるとおもむろにこんな言葉を紡いだ。

「これからは久保君ではなくて、久保建英でお願いします」

 もう子どものように「君づけ」で呼んでほしくない、ということなのだろう。現時点で唯一となる21世紀生まれのJリーガーはプロの矜持を強く抱きながら、バルセロナで一時代を築いたレジェンド、イニエスタの眼前で見せつけた大器の片鱗をコンスタントに発揮していく自分を追い求めていく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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