日本サッカーのレベルアップのために、小笠原は絶対に必要
「代表で一番思い入れがあるのはやっぱり99年ワールドユースで準優勝した時。自分がここまでサッカー選手としてやってきて、いろんな影響を受けたのは同級生のライバルたちだった。自分はサッカー選手をやめますけど、彼らにはまだまだ頑張ってほしい。(小野や稲本、本山らより)先にやめること? 自分の完敗です。最初から最後まで勝てなかった。ホントに偉大な選手たちだと思います」という言葉からも、スケールの大きな同期たちへのリスペクトが溢れ出ていた。
実際、小野や稲本、遠藤と対戦する時は真剣に削り合うことも少なくなかった。遠藤自身も「満男とのマッチアップが一番面白い」と語っていたことがある。勝負に勝ちたいと思うなら、仲間だろうが、親友だろうが関係ない。真のプロフェッショナリズムをピッチ上で体現し続けたのが小笠原満男という選手だ。
相手とのフィジカルコンタクトやバチバチとしたぶつかり合いだけでなく、アンフェアなプレーがあれば正面切って苦言も呈する。2017年5月の浦和レッズ戦で森脇良太を名指しで批判した時はその象徴。どんな時も真剣にサッカーに向き合っているから、時に熱くなる。黄金世代の面々は往々にしてそうだった。そういう名選手が去るのは、本当に寂しい限りである。
一言では語りつくせない高度な経験値を誇る小笠原がやらなければならないのは、鹿島と日本サッカーを強くすること。「まだどういう形か分からない」と本人は言うが、強化スタッフ入りして常勝軍団を支えていく形が有力視される。欧州や南米を視察し、最先端のサッカーを学ぶことも希望しているだけに、2019年は流動的な動きをするのだろう。
いずれにしても、確固たる信念を持ち、歯に衣着せぬ物言いができるこの男は、今後の日本サッカーのレベルアップのために絶対に必要だ。ピッチ外でも躍動する新たな小笠原の姿を楽しみに待ちたい。
(取材・文:元川悦子)
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