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Jリーグ 5年前

豪代表DFデゲネクが語った中澤佑二の引退、古巣マリノス、CL、そして中東移籍の真相

text by 舩木渉 photo by Getty Images

衝撃のサウジ移籍。その真相は…

ミロシュ・デゲネク
ミロシュ・デゲネクは横浜F・マリノスから旅立ち、CLでは力強い守備でリバプール撃破の原動力にもなった【写真:Getty Images】

 1990/91シーズンに欧州の頂点に立ったこともあるレッドスターだが、CLの本戦出場は大会が現方式になってからは初めて、ヨーロピアンカップ時代も含めると1991/92シーズン以来26年ぶりのことだった。

 そんな大舞台で、強豪揃いのグループに組み込まれながらも初戦でナポリと0-0のドローを演じ、ホームでリバプールに2-0という歴史的な勝利も収めた。デゲネクは英『BBC』に対し「セルビアのサッカーがまだ死んでいないことを世界に示した。レッドスターはまだ生きて、戦える」と語り、CLでの「夢」の実現を誇っていた。

 だが、そんな理想の環境での挑戦もわずか半年で終わりを迎えることになってしまった。つい先日、デゲネクはサウジアラビアの強豪アル・ヒラルへ移籍することが発表された。一部報道によれば、この移籍のためアル・ヒラルはデゲネクとレッドスターとの間の契約に定められていた違約金満額にあたる300万ユーロ(約4億円)を支払ったとも言われている。つまりクラブ間交渉の余地はなく、最後は選手本人の決断に委ねられる。

 とはいえ誰もが驚いた中東への移籍劇は、デゲネク自身にとって必ずしも望んだものではなかったという。彼は決して高額な給与を求めていたわけではない。それはもはや苦渋の決断と言っても差し支えないだろう。自ら勝ち取った挑戦の場を去らねばならない無念さと、愛するクラブを資金面で助けることができるという両面の狭間で葛藤したに違いない。彼は事の真相と偽りなき本音を明かしてくれた。

「実はレッドスターから僕の移籍に対して大きなプレッシャーがあった。クラブはお金を必要としていて、移籍に向けてかなりのプレッシャーをかけてきた。僕の移籍で相当な額のお金が手に入るからね。アル・ヒラルが僕を欲してくれた唯一のクラブで、中国へ移籍する別の選択肢もあったけれど、中国には行きたくなかったので断った。そうしてアル・ヒラルへの移籍を望んだんだ。これからどうなるかは見てみないとね」

 新天地に赴くのはアジアカップが終わった後。まずはUAEで2連覇を達成し、アジア王者の座を守ることに集中する。もし決勝トーナメントで日本代表と対戦することになれば、JリーグやCLで鍛えられたオーストラリアの背番号2は高い壁となってゴールの前に立ちはだかるだろう。デゲネクも「もうすぐ対戦することになるだろうね」と言いつつ、ニヤリと笑った。

 そして最後に、古巣であるマリノスへメッセージを託してくれた。デゲネクのマリノスへの愛情は、今も変わることなく彼の胸の内に刻まれている。

「マリノスに関わる皆さんへ。これから始まる新たなシーズンが最高のものになることを願って。アンジェ・ポステコグルー監督、コーチたち、共に戦った選手たち、新たに加入する選手たち、ファンの皆さんがJリーグで優勝できることを祈っているよ」

(取材・文:舩木渉【UAE】)

【了】

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