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日本代表 5年前

アジアカップの命運を握る男、長友佑都。「地獄を見るか、天国に行けるか」のサウジアラビア戦へ

text by 元川悦子 photo by Getty Images

「アジアカップは地獄を見るか、天国に行けるか」

 決勝トーナメント1回戦の難しさというのを長友は過去2回のアジアカップの経験を通して痛感している。彼が初参戦した2011年カタール大会の準々決勝・カタール戦は12分にいきなり失点。後半に香川真司が爆発して何とか3-2で逆転勝ちしたが、一瞬たりとも気の抜けない激闘だった。当時24歳の長友もまだ若手の1人で先輩についていくのがやっと。自分でゲームをコントロールできるようなタフさはなかった。

 続く2015年オーストラリア大会の準々決勝・UAE戦は開始早々の7分、アリ・マブフートの電光石火の一撃を許し、いきなりリズムが狂った。長友自身も27歳の中堅選手になっていたが、ブラジルワールドカップ惨敗のダメージから抜け出せず、報道陣から逃げ回るような状態だった。

 決戦前日の記者会見でも「ロシアへの4年間の中でこの大会をどう位置づけているか」と筆者から質問を受け、1分近く固まってしまい、同席していたハビエル・アギーレ監督に助け船を出されたほど。メンタル的な不安定さを象徴するように、試合の入りからミスを犯してしまった。

「アジアカップは地獄を見るか、天国に行けるか。チームを引き締めていてもやられてしまう怖さがある」と彼はしみじみ語ったが、困難な状況を切り抜けてきた経験を今こそ生かすべき時だ。

 実際、長友の陣取る左サイドは大一番の重要ポイントになる。サウジアラビアは4-1-4-1の布陣を採るが、右サイドのサレム・アル・ドウサリの技術とスピードが攻撃のスイッチ役になっている。複数のサウジアラビア人記者が「アル・ドウサリは最も危険な存在」だと口を揃えるほどのキーマンを長友と原口元気でキッチリ封じ、相手攻撃陣の迫力を半減させられれば、かなり有利な試合運びができるはず。

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