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日本代表 5年前

日本代表、サウジアラビア戦は「戦略」の勝利。鍵となった1本のコーナーキックの舞台裏

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Shinya Tanaka

「してやったり」だったコーナーキック

 では、森保一監督率いる日本代表はどのように勝ち筋を見出していったのだろうか。

 サウジアラビアがポゼッションを重視するチームであることはグループリーグでの戦いぶりからも明らかだった。彼らは3試合で1910本のパスを試み、成功率88.6%を記録していた。前者は韓国(1936本)に次ぐ全体2番目、後者は他をしのぐ全体で最も高い数値である。

 一方の日本はパス本数で全体4番目(1556本)、パス成功率では全体の3番目(84.8%)とサウジアラビアを下回っている。もちろん試合ごとに戦い方も異なるため一概に比較できるものではないが、3試合で平均72.2%のボール支配率を誇った相手に主導権を握られる展開は容易に推測できた。

 そこで鍵になったのはセットプレー、特にコーナーキックだった。グループリーグではコーナーキックの守備時にゾーンディフェンスとマンツーマンマーキングを併用していたサウジアラビアだったが、そこで明らかに弱みを晒していた。第3戦のカタール戦ではゾーンの隙間をあっさり破られて失点もしている。

 槙野智章は試合後、報道陣に「キッカーのタイミングと中の入るタイミングをちょっとうまくやったというのはありますので、まあ『してやったり』ですよね」と明かした。基本的に練習は非公開のため詳細はわからないが、他の選手たちの口ぶりからしてもセットプレーにかなりの時間を割いたことは間違いなさそうだった。

 そうして迎えた20分、準備の成果はこの試合初めてのコーナーキックで発揮される。柴崎が右足で蹴った内巻きのボールに、ペナルティエリア内中央で相手のマークを上回った冨安健洋がヘディングシュート。20歳のセンターバックの日本代表初ゴールで先手を取ることに成功した。

 キッカーだった柴崎は「誰が入ってくるかというのは、彼らが中で決めることなのであれですけど、狙ったところに蹴れたのは間違いない」と完璧なキックだったことを認める。一方、ゴールを決めた冨安は「パッと見て、『ゾーンいないな』と思いました」と相手が守り方を変えて弱点を晒していることを見抜いていた。

「相手も今までの『ゾーン+マンツー』でやっていたところから『マンツー』に変えてきて、そこのギャップというのは生まれていたと思いますし、『マンツー』にしてはちょっとマークが緩いと思っていたので、うまくマークを外すことができたというか。本当に練習からいいボールを蹴ってくれていたので、しっかりそこに合わせるだけでした」

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