フットボールチャンネル

日本代表 5年前

日本代表を翻弄…アジアカップのVAR運用プロセスを検証。得点取り消し&PK獲得は正しかったのか?

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Shinya Tanaka

PK判定の「訂正」は正しかったのか?

堂安律
日本は堂安律のPKによるゴールでアジアカップ準決勝進出を果たした【写真:田中伸弥】

 では判定の訂正についてはどう考えるべきか。確かに映像を確認すれば堂安は相手選手に足を踏まれて倒れている。この場面で主審は堂安と、彼を倒した選手の延長線上に立っており、その間には別の選手が2人いて、足が踏まれているかどうかまでは見えていなかった可能性がある。

 オン・フィールド・レビューではゴール側からの視点で撮影された映像のスローモーションや通常速度などあらゆるものを確認することができ、この場面でも両方確認していたが、確かにスローでは堂安が足を踏まれている瞬間がわかりやすく映されている。一方で通常速度の映像では横方向からボールに対しての正当なチャージに見えてもおかしくない。足を踏んでいる反則のあったタックルか判別するのは通常速度の映像のみでは難しかっただろう。

 PKがあったかどうかを確認しており、主審によって「見逃された重大な事象」で誤審だった可能性はあるが、一度ノーファウルと判定して流していることも踏まえれば「はっきりとした、明白な間違い」として、その判定を覆すに値したのかには疑問が残る。仮に堂安の接触が見えていたとすれば、当初のノーファウル判定のままであるべきだろう。

 結果的に堂安の接触に対する判定が訂正されたことでPKが与えられ、日本は報われる形となった。だが、本来であれば吉田のケースはVARの介入が必要ない場面で、堂安のケースはVARによる判定の変更が必要なかった可能性もある。

 そういったことを踏まえると、試合の流れは全く違うものになっていてもおかしくなかった。ロシアワールドカップではグループリーグでVARによる介入が連発して問題となり、決勝トーナメントになってから基準が修正されたが、アジアでの運用にもまだまだ課題はありそうだ。

 決勝トーナメントは残り5試合。ヨーロッパのように適切な運用が根づくまで時間はかかるかもしれないが、まずは今大会期間中にVARがどのように運用されていくかにも注目していきたい。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

【了】

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top