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日本代表 5年前

日本代表を翻弄…アジアカップのVAR運用プロセスを検証。得点取り消し&PK獲得は正しかったのか?

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Shinya Tanaka

吉田麻也のゴール取り消しは適切か?

吉田麻也
喜びもつかの間…吉田麻也のゴールはVARの介入によって直前にハンドがあったと判定されて取り消された【写真:Getty Images】

 では、日本戦でのVARの運用は正しかったのだろうか。それぞれのケースを検証していきたい。

 まず24分の吉田のゴール取り消しの場面。ここでは柴崎岳の左コーナーキックに、吉田がペナルティエリア内の混戦の中でヘディングシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。主審はペナルティエリア内ではあるが、ゴールから少し離れて左寄りに立っていた。吉田のことは人混み越しに見ることになる。

 ここで疑われたのは吉田がヘディングした際に、ボールが腕に触れて「ハンド」があったのではないかということ。ゴールしてから約1分10秒後に主審はベトナムのキックオフで再開する直前で試合を止めて「オン・フィールド・レビュー」を要求した。

 このタイムラグを考えると、おそらく映像を確認していたVAR側から主審に対して何かしらの進言があったと思われる。だが、改めて映像を確認しても吉田がハンドを犯しているか通常スピードの映像で判断するのは非常に難しく、ベトナムの選手たちがゴール後に一切抗議していないことなども考慮すると「はっきりとした、明白な間違い」や「見逃された重大な事象」であったかどうかには疑問が残る。

 であれば本来はVARは介入すべき事案でなかったと言えるかもしれない。スロー映像では接触や反則が強調されやすくなってしまうが、もしそういった特殊な映像でしか確認できないハンドだったとすれば「はっきりとした、明白な間違い」と判断するのは難しい。

 吉田は試合後に「まあしょうがないですね。(手に)当たったような気もしたし」と苦笑いでVARを用いた主審の判断を受け入れていたが、疑問の残る判定だったと言わざるをえない。ハンドリング(いわゆる「ハンド」の正式名称)は「競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為」と定義され、「ボールの方向への手や腕の動き」「相手競技者とボールの距離」を考慮しなければならない。手や腕の位置だけで、反則とはみなされず、今回のケースで吉田はヘディングのためのジャンプの動作をしており、腕はそのために適切な位置にあって、「意図的に」ボールに触れられる場所にもなかった。

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