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Jリーグ 5年前

マリノスは異例の主将3人制。天野純と喜田拓也が語った強烈な覚悟、そして指揮官の意図とは?

text by 舩木渉 photo by Getty Images

キャプテン3人制、指揮官の意図とは?

扇原貴宏
扇原貴宏は昨季途中からゲームキャプテンに。ピッチ上でのリーダーとしての経験を今季も生かせるか【写真:Getty Images】

 喜田は頼もしいプレーもさることながら、模範的な行動でチームの精神面も支えるタイプのように見えるが、天野は少し違う。よりピッチ内での貢献にフォーカスした、彼なりの貢献の仕方を見出そうとしている。それは「言葉で引っ張るタイプではないので、プレー面でチームを引っ張っていきます」というクラブ公式サイト上に掲載されたコメントからも伺い知れる。

 実際のピッチの上でも「力強さだったり、最後を振り切って自分でフィニッシュに持っていく馬力の部分だったりを伸ばしたい。そこのトレーニングは継続的にやっているので、徐々にそういったところが見えてくれば、さらにもっと怖い存在になれる」と成長した先の次の一歩が見えてきている。

 だからこそ、なのだ。天野の力強い口ぶりと引き締まった表情からは、今季にかける強い思いが感じられる。「現体制の2年目は、勝負のシーズンになる。より結果を求める上で鍵になるところは何か?」という質問に、彼は次のように答えた。

「いやもう…自分がどれだけ違いを作れるか。そこに個人的にはフォーカスしてやっていくつもりですし、試合に負けたら自分の責任で、勝ったら『自分が違いを作った』と言いたいし、そういうプレーを出したいし、そこは本当に覚悟を持ってやっていきたいなと思います。

(監督も新シーズンに期待を持っているようだが?)昨年の失敗を繰り返してはいけない。本当に結果が全てなので、いくらいいサッカーをしても昨年みたいな順位で終わったら何も言えない」

 昨年の12位には誰も満足していない。今年は「もう優勝しか狙っていない」と天野は言う。そのためには「ピッチレベルで自分たちが話し合って、しっかり耐える時間帯も作らないと」と現実的な思考の必要性を訴える。

 ポステコグルー監督が目指す「90分間つなぎ倒すサッカー」を、拮抗するJ1において全ての試合で続けるのは難しい。実際に、マリノスよりも明らかに優れた力を持つチームもある。故に「勝つため」にはピッチ上で、悪い言い方をすれば時に監督の指示を無視してでも、各々がリーダーシップをとって「つなぐ」ことを諦めるサッカーを選ぶ必要もあるだろう。その先頭に立って、チームを引っ張っていく存在に天野はなろうとしている。

 扇原は昨季もゲームキャプテンを務め、生え抜きではないがマリノスの中心選手として矢面に立った経験を持っている。今季も腕章を巻くかは不明だが、積み上げた経験値は変わらずチームに還元していけるはずだ。

 そこに精神的支柱やピッチ上での大黒柱になりうる喜田と天野が加わり、それぞれのキャラクターを生かして支え合いながら簡単には崩れない、強固なマリノスの土台を作る。派生して他の選手たちにも自立を促し、ピッチ内外で誰もが自覚を持ってリーダーとして振る舞える組織を作る。これこそがポステコグルー監督の狙いなのではないだろうか。その中で影響力の発信源としてキャプテンを任された彼らはいずれ欠かせない「3本柱」と言われるようになっているかもしれない。

「優勝を目指して、開幕から見ている人を驚かせるようなサッカーで勝てればいい」と天野は言った。有言実行となるか。23日のガンバ大阪とのJ1開幕戦から、彼らはこれまで以上に大きな責任を背負い、覚悟が試されることになる。まずは黄色い腕章が誰に巻かれるかにも注目して見ていきたい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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