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Jリーグ 5年前

マリノスが手にした「踏ん張れる強さ」。ラストプレーの劇的同点弾を生んだ団結力の秘訣

横浜F・マリノスは10日、J1リーグ第3節で川崎フロンターレと2-2の引き分けを演じた。チームの柱が出場できない中で、連覇中の王者に2度勝ち越されながら、ラストプレーで勝ち点1をもぎ取る。最後の最後まで諦めない姿勢には、数字で測ることのできない力強さがあった。(取材・文:舩木渉、データ提供:Wyscout)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

三好の不在をいかに乗り越えるか

三好康児
川崎フロンターレ戦は三好康児が不在。今後への試金石になる重要な試合となった【写真:Getty Images】

 たった1人の不在の影響がピッチ上に現れた。横浜F・マリノスの三好康児は、レンタル元である川崎フロンターレとの対戦に出場できない。あらかじめそのことがわかっていながら、実際に迎えた11日のJ1第3節で彼がチームの柱になっていることが改めて証明された。

 開幕からリーグ戦2試合で2連勝していたマリノスにおいて、中盤より前の選手で最も多くのパスを受けていたのが三好だった。第1節のガンバ大阪戦は58本でチーム内最多、第2節のベガルタ仙台戦でも67本のパスを受け取っていた。

 そこからどう展開するかも興味深い。それぞれの試合で三好のパスの受け手となった選手を多い方から3人ずつ並べると、G大阪戦はチアゴ・マルチンス(9本)、天野純、仲川輝人(ともに7本)、仙台戦は仲川(9本)、マルコス・ジュニオール、高野遼(ともに7本)となる。

 1試合で50本以上のパスを受ける三好は高確率でボールを持った状態のまま前を向き、自分よりゴールに近い場所に立つ選手へとパスを届けられる。そういった傾向はデータを通して見えてきていた。

 では、フロンターレ戦で三好がいなくなったマリノスはどうなったかといえば、モロにその影響を受けたように見えた。特に前半、ボールの預けどころでありビルドアップの起点にもなる三好の不在によって、最終ラインからのパスコースが1つ消え、相手のハイプレッシャーを受けながらミスが続いた。

 GKからの縦パスがずれたところを狙われて4分にフロンターレに先制を許し、出だしでつまづいてしまう。だが、ここからが1年前とは違った。昨季のマリノスはホームでフロンターレにボール支配率で圧倒的に上回られ、なんとか勝ち点1を拾うにとどまった。ところが今年は選手たちが同じドローにも、チームとしての成長を実感しているのである。

「少し前までは(フロンターレを)リスペクトしすぎて引いたり、ちょっとプレッシャーをかけられたらボールをつなげなくなったりとか、同じ目線でできていなかったんですけど、今日に関しては何のプレッシャーも感じずに、他と同じ目線でプレーできているので、次やった時がすごく楽しみです」

 天野は2連覇中の王者相手のドローに大きな手応えを感じているようだった。「同じ目線」を持てた理由もハッキリしている。「積み上げてきたものへの自信と、自分たちのテンポでやったら絶対に相手はついてこれないという自信、そこかなと。チームみんなにそのオーラが出てきているので、一緒にやっていて頼もしい」と背番号10は胸を張る。

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