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日本代表 5年前

前田大然は”韋駄天苦戦の歴史”を覆すか。ポルトガル移籍を決めた理由と先輩が残した教訓【コパ・アメリカに挑んだ若き日本代表の今(3)】

松本山雅に所属するFW前田大然がポルトガル1部・マリティモに期限付き移籍をすることが決まった。6月に開催されたコパ・アメリカ2019(南米選手権)で日本代表デビューを果たした韋駄天は、どのような思いを持ってポルトガルへと旅立ったのか。似た特徴を持つ先輩は、海外挑戦の苦戦から得た教訓を残している。(取材・文:元川悦子)

シリーズ:コパ・アメリカに挑んだ若き日本代表の今 text by 元川悦子 photo by Getty Images

ゴールを置き土産に松本を発った

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日本代表としてコパ・アメリカに出場した前田大然【写真:Getty Images】

 6月からのJ1・6戦未勝利でJ2降格圏に沈んでいた松本山雅。だが、20日のホーム・サンフレッチェ広島戦はモチベーションが違っていた。ポルトガル1部・CSマリティモへの期限付き移籍が秒読み段階に入っている前田大然の国内ラストマッチになるとあって、何としてもいい結果がほしかったのだ。

 異様な熱気の中、迎えた一戦。松本はまずまずの入りを見せながら、いつものように決定力を示せず、前半を0-0で折り返す。そして後半開始早々、柏好文に一瞬のスキを突かれて1点を献上。「自分が2010年に来てから先制された試合をひっくり返したのは数回しかない」と飯田真輝が言うように、先制された松本の勝率の悪さは明らかだった。

 それでも前田は諦めず、自慢の快足で圧力をかけ続ける。その姿勢が奏功したのが、後半25分の同点シーンだ。新戦力・阪野豊史が落とし、右サイドの田中隼磨が角度のないところから折り返したボールに背番号7が鋭く反応。右足を豪快に振り抜いたのだ。

「その瞬間はあんまり覚えてない。来たボールを蹴った感覚」という自然体のシュートは確実にネットを揺らした。6月のコパ・アメリカ2019(南米選手権)では決めるべきところで決められず、その後も好機を逃し続けてきた韋駄天がついに壁を乗り越えた。意地の一発が最終的に2-2のドロー、16位浮上を引き寄せたのだから、松本にとっても意味あるものだった。

「今までずっと迷惑をかけてきましたし、今日決めるか決めないかはホントに個人的に大事だった。いろんな思いがこみあげてきました」と万感の思いを吐露して、彼は翌21日朝、松本を後にした。

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