リバプール、まさかの敗退も…? なぜナポリに苦戦を強いられたのか。厄介な存在になった働き屋

チャンピオンズリーグ・グループリーグE組第5節、リバプール対ナポリが現地時間27日に行われ、1-1のドローに終わっている。苦手とするナポリにまたも勝利することができなかったリバプール。グループリーグ突破もやや厳しい状況にあるが、なぜここまでの苦戦を強いられてしまったのか。(文:小澤祐作)

2019年11月28日(Thu)11時58分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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ナポリが見せた変化

リバプール
リバプールはホームでナポリと対戦し1-1で試合を終えている【写真:Getty Images】

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 昨季のチャンピオンズリーグ(CL)で王者に輝いたリバプールだが、今季もグループリーグ第5節を終えた段階で決勝トーナメント行きを決めることができなかった。彼らの目の前に立ちはだかったのは、またもナポリ。今季リーグ戦でマンチェスター・シティなどを撃破してきたリバプールでも、難敵・ナポリの攻略は成功しなかった。

 現地時間27日に行われたCL・グループリーグE組第5節はリバプールとナポリの両者にとって大一番であった。この試合で勝ち点3を奪った方が、1試合を残してグループ突破を決めることができたからだ。伏兵・ザルツブルクが好パフォーマンスを見せ混戦状態となっているE組をいち早く抜け出して一呼吸置きたい、という思いは両者ともに同じだったはず。勝ち点3獲得はお互い必須であった。

 そんな重要な一戦で変化を加えてきたのはナポリ。カルロ・アンチェロッティ監督は攻撃時の並びを3-5-2、守備時の並びを4-4-2に定めたのである。

 右CBに入ったDF二コラ・マクシモビッチは守備時に右サイドバックへと回る。本来はサイドバックを務めるDFジオバニ・ディ・ロレンツォは一列前に配置。これにより、守備時にマクシモビッチがFWサディオ・マネを、ディ・ロレンツォがDFアンドリュー・ロバートソンにマンマーク気味で対応することができたわけだ。

 本来、ナポリにおいて右サイドハーフを務めるのはMFホセ・マリア・カジェホンだが、エンポリ在籍時代から攻撃的サイドバックとして名を馳せ、攻守両面で働けるディ・ロレンツォの方が守備面でより強度の高いプレーを発揮できると考えたのだろう。左足の高精度クロスなどでチャンスを生み出すロバートソンを生かさないためのものならば、非常に効果的な采配であったと言える。

 ナポリはリバプールに対しまず守備から入った。全体でチャレンジ&カバーの意識を強く持ちながら、深いエリアに侵入してきた相手を捕まえる。一人ひとりの球際の強さが際立っており、リバプールの攻撃陣を機能不全とさせていた。

 ナポリはボールを奪ったら迷わずFWドリース・メルテンスとFWイルビング・ロサーノの2トップを狙って長いボールを蹴り込む。当然、この二人は身長がそれほど高くないので、相手CBの裏のスペースを狙ってのものだ。とくにメキシコ代表のロサーノは加速力がある選手なので、このあたりの狙いも決して悪くなかった。

 先ほどナポリは攻撃時に3-5-2の並びになると紹介したが、ボールを奪ったらすぐ2トップに狙いを定めるため、オフェンス時に陣形を整わせる余裕はほとんどない。そのため、試合の中では基本的に4-4-2の並びを崩すことはなかった。だが反対に、4-4-2を崩さないおかげで守備面の強度は保たれる。3バックのままではどうしてもサイドに大きなスペースができることがあるが、そのあたりも的確にカバーできていたわけだ。

支配率70%を記録も…

 ボールを保持しながらも効果的な攻めを見せることができないリバプールに対し、ボールを保持されながらも守備面で上回ったナポリ。立ち上がりはアンチェロッティ監督の采配が効果を発揮していたと言える。

 攻撃の糸口を見つけられないリバプールは19分にMFファビーニョが負傷で交代。ボールの収め所、また配給所を失ったのはリバプールにとって最大の誤算であり最大の痛手となった。流れは完全にナポリのペース。そして、ファビーニョの負傷交代からわずか2分後のことだった。

 右サイドでボールを持ったディ・ロレンツォから裏へ抜け出したメルテンスへ長いボールが出る。オフサイドラインギリギリで飛び出したベルギー代表FWはGKアリソンとの1対1を冷静に制してナポリに先制点をもたらした。

 ディ・ロレンツォからボールが出る直前、DFフィルジル・ファン・ダイクがメルテンスとの接触で腰を痛め、動けなくなったのが痛かった。これによりメルテンスはフリーでリバプール守備陣の背後に。DFデヤン・ロブレンは懸命にカバーに回るが追いつかず。リバプールにとっては少し不運な形での失点となった。

 本拠アンフィールドで0-1とリードされたリバプールは強力3トップを中心とした攻めで反撃を試みるが、それを上回ったのがナポリの守備陣。1+1でボールホルダーを挟み込み、ボールを奪いきる。右サイドハーフに回ったディ・ロレンツォの運動量も豊富で、ロバートソンの高精度クロスも影を潜める。また、リバプールはこの日、右サイドバックにDFジョー・ゴメスが起用されていたが、攻撃面での存在感はやはりDFトレント・アレクサンダー=アーノルドには劣る。このあたりの弱さはナポリを助ける形となってしまった。

 結局、リバプールは前半だけで支配率70%を記録したが無得点。シュート数は7本とナポリを上回ったものの、枠内に飛んだのは2本のみ。シュート4本で1点を奪ったナポリとは対照的なデータが残っている。より、攻撃と守備での約束事を徹底して行っていたアウェイチームの方が、満足いく前半を送ったということだ。

リバプール怒涛の攻め。それでも耐えたナポリ

 しかし、後半に入ると流れは一変。より攻撃に意識を高めたリバプールがナポリを圧倒することになる。

 56分にはゴメスに代えてMFアレックス・オックスレイド=チェンバレンを投入。MFジョーダン・ヘンダーソンを右サイドバックに回したのだ。ゴメスが攻撃面であまり存在感を放つことができなかったので、より果敢に前に飛び出していけ、かつハードにプレーできるキャプテンをそこに配置したのだ。

 リバプールはサイド攻撃が基本。深い位置まで押し込むことができたらサイドバックが高いポジションを取ってサポートする。そして、ボールを預かったらダイレクトでクロス。後半はここを徹底して行ってきた。ナポリの中盤が堅いため、この手法で点を奪いにいく意識へと切り替えたのだ。だからこそ、ヘンダーソンをサイドバックに回したとも言える。

 こうしてナポリを押し込み続けたリバプール。65分にはCKからロブレンがヘディング弾を沈め、なんとか同点に追いついた。ここから彼らの勢いはさらに加速することになる。

 ナポリは疲労の影響もあってか、ボールホルダーに対するプレッシャーが前半と比べ明らかに落ちていた。中盤にちらほらとスペースができてしまっており、リバプールにそこを突かれては深い位置まで押し込まれる。この繰り返しであった。

 リバプールが徹底して行ってくる鋭いクロスにはDFカリドゥ・クリバリとDFコスタス・マノラスの両CBが粘り強く対応し、GKアレックス・メレトも勇気を出して飛び出し的確にキャッチングするなど相手にチャンスを与えない。しかし、セカンドボールもことごとく拾われるため、攻撃のための守備ではなくただただ耐えている。そんな印象であった。

 ナポリは後半にFWフェルナンド・ジョレンテ、MFエリフ・エルマス、FWアミン・ユネスを送り出すなど攻撃面に変化を加える。ロサーノ、メルテンスらを下げるなど、前半から徹底していた相手の背後を狙う攻撃から一度ボールを収め、そこから組み立てる遅攻へと切り替えたのである。

 しかしながら、そのオフェンスにおいて最も重要となるジョレンテはファン・ダイクを前に存在感が消える。エルマスもユネスも守備に追われるため、なかなか攻撃時に特徴を出せない。ナポリが押し込まれる展開は、大きく変わらなかった。

 それでも耐えた。試合はそのまま1-1で終了。ナポリは敵地で貴重な勝ち点1を奪取した。最終節でヘンクに勝利すれば、自力で決勝トーナメント行きを決めることができる。ホームでの一戦ということもあり、ベスト16入りは近いだろう。

 一方でリバプールはホームで痛いドローに。最終節はアウェイのザルツブルク戦。ここを落とすと、まさかのグループリーグ敗退に終わるかもしれない。前回王者は昨季と同じく、窮地に追い込まれている。

ナポリを救った働き屋の存在

アラン
攻守において存在感を放ったアラン【写真:Getty Images】

 最後の最後まで攻めながら1点止まりとなったリバプール。結果論にはなるが、前半の出来が大きく試合の結果に響いたと言える。苦手とするナポリにまたも勝てなかった。

 さて、敵地で貴重な勝ち点1を拾ったナポリだが、この日のヒーローはMFアランだと言えるだろう。

 中盤底で90分間、攻守において走り続けたブラジル人MFは、FWロベルト・フィルミーノやFWモハメド・サラーら難しい選手を相手にも圧倒的な守備のうまさを見せた。対人で負けることがほとんどなく、ボールを奪ってはカウンターに繋げる。自身の持ち味であるものを存分に発揮して、リバプールを大いに困らせた。

 アランの存在感は目立たぬところでも発揮されている。たとえば36分の場面ではディ・ロレンツォとマクシモビッチが外に釣り出され、CBマノラスとの間に大きなスペースが生まれていた。恐らくこのエリアを使われていたら大ピンチを招いていたが、そのスペースにいち早く気づきカバーしたのがアランであった。このあたりの判断力なども、この日は目立たずともチームを助けていた。

 アランはこの日、タックル成功数5回を記録している。これは両チーム合わせてトップの成績だ。走行距離も11.31kmと高い数字。チームでは3番目に良い記録である。デュエル勝利数も14回中8回。ほとんどの場面で相手に勝っていたと言える。

 試合後のヒートマップを見ても、アランが中盤の幅広いエリアに顔を出していたことがわかる。MFファビアン・ルイスがより攻撃に絡めるのも、この男の存在が大きいと言える。CLのベスト16進出、そしてリーグ戦での復調へ。まだまだアランの働きぶりが求められることになりそうだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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