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日本代表 4年前

日本代表・森保一監督は兼任続行の理由は? 3月活動は「話していません」…拭えないモヤモヤ感

森保一監督は、A代表とU-23代表を兼任したままでいいのか。東京五輪本大会を約半年後に控え、AFC U-23選手権(東京五輪アジア最終予選)での早期敗退を受けて指揮官の去就をめぐる議論が過熱した。日本サッカー協会(JFA)が兼任継続を宣言したものの、やはり明確な指針が示されない現状と将来への不安は拭えない。(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

森保一監督の2チーム兼任体制は継続

森保一
【写真:Getty Images】

 1月のAFC U-23選手権での惨敗を受け、森保一監督のA代表とU-23日本代表の兼務について異論が噴出した日本サッカー界。「今夏の東京五輪本大会まではU-23代表の活動に専念すべき」「A代表監督継続は今後の結果しだい」などといった厳しい声が関係者からも噴出する中、29日に注目の日本サッカー協会技術委員会が行われた。

 長時間に及んだ会議の後、メディア対応した関塚隆技術委員長は「技術委員会の中でいただいたいろいろな意見を聞きながらも、今まで取り組んできた方向性について(各委員に)説明し、ご理解をいただいた」と森保監督の兼任継続が承認されたことを改めて強調。

 30代のベテランが多く高齢化が顕著だった2018年ロシアワールドカップ時のA代表から若返りが図られ、世代間の融合も進んでいる点を評価し、現体制維持を決めたという。

 同時に「サポート体制を強化していく」とも語ったが、具体的に何をどのようにテコ入れしていくのかは今のところ不明。直近の3月のA代表とU-23代表の活動についても、「今日は(技術委員会でも森保監督とも)そういう話はしていません」と明言を避けた。

「2月中に開かれる次回の技術委員会までに森保監督と話をして結論を出す」という見通しは示したものの、明確なビジョンが打ち出されることはなく、モヤモヤ感は拭えなかった。

 ただ、これについては早急に解決しなければならない重要課題に他ならない。3月の国際Aマッチウィークは、まず26日に豊田スタジアムでA代表の2022年カタールワールドカップアジア2次予選・ミャンマー戦があり、27日にU-23代表の南アフリカ戦が京都のサンガスタジアムで開催される。さらに30日には博多の森球技場でU-23コートジボワール戦と東京五輪世代のホームでの親善試合が続く。

 A代表は31日にアウェイの地・ウランバートルでカタールワールドカップアジア2次予選のモンゴル戦に挑む予定で、1人の監督が全てを指揮することは現実的に不可能なのだ。

「積み重ねが成功につながる」とは言うが…

 昨年11月シリーズではキルギス→広島→大阪と3試合を掛け持ちした森保監督も、さすがに今回は弾丸移動はできない。豊田→亀岡→福岡までは行けたとしても、翌日にウランバートルへ辿り着くのはチャーター便でも飛ばさない限り無理だろう。

 これまで通りA代表優先なら、豊田→亀岡→ウランバートルの流れが順当だろうが、もともと東京五輪代表の仕事を先に請け負っていた森保監督が、AFC U-23選手権での惨敗を受けて「東京五輪代表の強化に軸足を置きたい」という意向を強めているのは間違いなさそうだ。

 関塚技術委員長も「ここからは本格的な五輪への準備を進めたい」と技術委員会後にコメントしているのだから、A代表の指揮を別の代行監督に任せてU-23代表に帯同し続けるという判断も十分にあり得る。関塚氏自身、2012年ロンドン五輪代表の指揮を執り、アジア最終予選では中立地・ヨルダンでシリアに苦杯を喫するなどの苦い経験をしているだけに、五輪への強化が片手間ではできないことを痛感しているはず。

「1つひとつの小さい成功と大きな成功に持っていくことが大事。積み重ねが成功につながる」としみじみ語っていたのを見ても、本音の部分では「森保監督にはU-23代表の活動に専念させてやりたい」という気持ちが少なからずあるようだ。

 加えて言うと、3月のU-23代表の国内2連戦は五輪出場国とのゲームになる。南アフリカもコートジボワールも4ヶ月後に日本で大舞台を迎えるということで、本気モードで来日すると見られる。少なくとも昨年末のU-23ジャマイカ代表戦のような緩い試合にはならないはずだ。「本大会の前哨戦」とも言える2試合には、できるだけ本番を想定したチーム編成で臨みたいというのが森保監督と関塚委員長の偽らざる思いではないか。

3月にA代表主力組をU-23代表に招集すべし

 となれば、欧州組の久保建英や堂安律、冨安健洋ら主力級メンバーはもちろんのこと、オーバーエイジ枠有力候補と位置づけられる大迫勇也や柴崎岳も加えたいところだろう。

 とはいえ、「A代表は公式戦なのに、U-23代表の親善試合を優先するのか」という異論を唱える人もいる。ミャンマー、モンゴルという相手との実力差を考えれば、森保監督が不在かつ数人の主力メンバーを欠いても問題ないという見方もできる。

 だが、大迫や柴崎以外のA代表主力組である程度、所属クラブでも継続的に活躍しているのは南野拓実や酒井宏樹くらい。守備の大黒柱である吉田麻也と長友佑都のクラブでの立場が微妙になるなど、不安要素は尽きないだけに、「やはりA代表でリスクは冒せない」という結論に落ち着く可能性も否定できない。

 いずれにしても、29日の技術委員会でこの重要テーマに踏み込んだ議論がなされなかったのは残念だ。単に「森保監督の兼任体制継続」だけを打ち出しても、先々の強化プランがハッキリしなければ、選手もファンもメディアもモヤモヤ感は晴れない。こういった重苦しいムードを払しょくできないまま、時間だけが経過していけば、日本代表の人気や、ひいてはサッカー人気のさらなる低下にもつながりかねないだろう。

「森保監督とはこれから時間をかけてゆっくり話したい」と関塚技術委員長は述べたが、とにかく肝心なのはいち早く、先々の代表活動の詳細と方向性を明示することだ。2月上旬にも結論を出し、多くの人々を安心させることを強く求めたい。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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