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Jリーグ 4年前

ヴィッセル神戸は横浜F・マリノスから「学ばなければいけない」。山口蛍が感じた課題とは?【この男、Jリーグにあり/後編】

8日に行われたFUJI XEROX SUPER CUPは、3-3で突入したPK戦でヴィッセル神戸が横浜F・マリノスを破り、初優勝を飾った。3点目のゴールを奪った山口蛍は、PK戦では7人目のキッカーとして試合を決めた。最終的にはJ1王者を撃破したものの、「自分たちが学ばなければいけない」と山口は対戦を振り返っている。(取材・文:藤江直人)

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ゴールという数字の部分は求められる」

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【写真:Getty Images】

 アンジェ・ポステコグルー監督のもとで昨シーズンからハイプレスを導入し、J1戦線を制したマリノスとの90分間は、その意味でもヴィッセルを、そして山口を悩ませた悪癖が消去されたかどうかを問ううえで、またとないリトマス試験紙となったのではないだろうか。

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 果たして、マリノスのハイプレスにさらされても、コンビネーションを熟成させてきたフェルマーレン、大崎、ダンクレーの3バックがやみくもに、あるいは苦し紛れに前線へ蹴るシーンはほとんどなかった。新加入のドウグラスがイニエスタとのホットラインを開通させて27分に先制点をあげれば、ハイプレスから相手のミスを誘発した40分には古橋もゴールで続いている。

「もともとそういう(ハイプレスを仕掛ける)スタンスで、今日は試合に入っていたので。それはいいと思うし、実際にそれで点も取っている。自分たちの武器にしていければと思っているし、ただマリノスもハイプレスできていたし、マリノスの方が自分たちのプレスを剥がす技術とか、戦い方はすごく上手かった。そこは自分たちが学ばなければいけない」

 お互いにハイプレスをかける戦い方は、特に後半に激しさを増した。インサイドハーフではなく3トップの右に近い位置に山口が入ったのも、対面に来る攻撃のキーマン、左サイドバックのティーラトンをはじめとするマリノスの選手たちへ、より強いプレッシャーをかける狙いがあったはずだ。

 2-2で迎えた69分には、山口が勝ち越しゴールをあげた。中盤で相手のパスをカットして右サイドに開いたイニエスタに預け、マリノスがかろうじて防いだイニエスタのパスのこぼれ球に誰よりも早く反応し、弾道を低く抑えた強烈な一撃をマリノスのゴールへ叩き込んだ。

「前線でプレーする以上は結果というか、ゴールという数字の部分は求められるので。ただ、3失点目もそうですけど、相手のカウンターからやられた場面でゴール前に(自分が)いられないのは、すごくもどかしい部分もある。ちょっと簡単に失点しているので、そこはACLも含めてしっかりしていかないと、逆に相手にやられてしまうので」

「徐々にボロが出てくる可能性もある」

 天皇杯覇者としてFUJI XEROX SUPER CUPだけでなく、アジアの頂点を目指すAFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも初めて挑戦する今シーズン。12日にはACLグループリーグ初戦で、マレーシア王者ジョホール・ダルル・タクジムをホームのノエビアスタジアム神戸に迎える。

 しかも、グループGには水原三星ブルーウィングス(韓国)、そして広州恒大(中国)と強敵が集っている。先蹴りのマリノスの3人目から9人連続が失敗する、Jリーグの主管試合におけるワースト記録が打ち立てられた前代未聞のPK戦で7人目のキッカーを志願。冷静に決めて決着をつけた山口は、勝っても負けても浮き彫りになる課題と、正面から向き合わなければ成長はないと前を見すえる。

「結果は本当によかったですけど、課題もたくさんあった。時間がなくてもそこをしっかりやっていかないと、徐々にボロが出てくる可能性もある。アンドレスやトーマスといった国際経験が豊富な選手がいるし、プラスしてオレや高徳もいることがやっぱりこのチームのアドバンテージだと思うので。それをいろいろな選手に上手く伝えて、チームとして戦えるようにしていきたい」

 フィンク監督の意向もあり、従来の大型補強から一転して、即戦力に限ればドウグラスのピンポイント補強にとどめられた今シーズン。上向きに転じた昨夏以降の流れが重視されたヴィッセルのなかで、忌憚なく意見を放てる山口は加入2年目にして、代役の効かない存在感をすでに放ちつつある。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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