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Jリーグ 4年前

鹿島アントラーズが目指す戦術的改革とは? 批判も覚悟か…新監督が語るその狙い【Jリーグ戦術の潮流・後編】

昨季、魅力的かつ機能的なサッカーを披露した横浜F・マリノス。彼らがシティ・フットボール・グループと提携し、15年ぶりにJ1優勝を果たしたことで、他のクラブも世界最先端の戦術を知り、チームに落とし込む作業は必須となっていくことだろう。プレシーズン、各チームのキャンプを取材した河治良幸氏がレポートした3/6発売の『フットボール批評issue27』から一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:河治良幸)

text by 河治良幸 photo by Editorial Staff

改革と勝利を両立させるには

ザーゴ
【写真:フットボール批評編集部】

 新シーズンに向けて改革に踏み出した象徴的なクラブが鹿島アントラーズだ。これまで悲願の初制覇となった2018年のACLを含む“20冠”を獲得してきた名門も昨シーズンは無冠に終わった。

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 大岩剛前監督が率いたチームはリーグ戦、ACL、ルヴァン杯、天皇杯の全てでタイトルの可能性を残すなど“鳴かず飛ばず”だった訳ではない。多くのケガ人に悩まされたことも事実だが、伝統的な4-4-2をベースとした良くも悪くもオーソドックスな戦い方だけではシーズンを重ねるほど苦しくなってくることは明白だった。

 柏レイソルに在籍した経験を持つ元ブラジル代表DFのアントニオ・カルロス・ザーゴ新監督は欧州で指導者ライセンスを取得し、監督としては母国ブラジルで『レッドブル・グループ』のブラガンチーノをブラジル・セリエB優勝、セリエA昇格に導いた。

「僕は指導者を始めたときからパスワークを重視している。ただ、相手陣内でのパスワーク、相手ゴールに向かう迫力を要求しています。パスワークと言ってもただ自陣でボールを保持しているという人もいますけど、僕はそれが嫌い。いかに相手陣内に入って、相手のゴールに迫力を持って行くかということをずっとやって来た。それを鹿島でも同じように表現することができればなと思います」

 そう語るザーゴ監督はディフェンスに関しても、レッドブル・グループの“総本山”と言えるブンデスリーガのライプツィヒがそうであるように、高い位置から組織的にプレスをかけて、ボールを奪うことをモットーとしている。

「相手にプレッシングをかけること、相手に圧力をかければ、相手のゴールの近くで攻撃をすることができる。それは重要であるし、ボールを持つ、パスワークをするということも重要です。どっちかを優先するということは、サッカーは数字の計算式とかマニュアル通りには行かないので、両方を100%でできればと思います」

 信念を持って改革にチャレンジする姿勢を打ち出すザーゴ監督だが、同時に鹿島アントラーズが本来持っているべき“勝者のメンタリティ”を取り戻させたいという。しかし、構造的な変革を進めていることと勝利を両立させることはそう簡単なことではない。実際に就任からほとんど準備もままならないまま迎えたACLのプレーオフで、日本勢としては初めて敗戦を喫し、いきなりアジア制覇の道が断たれてしまった。

 仕切り直しでキャンプを経て臨んだルヴァン杯の初戦も、名古屋グランパスに1-0で敗れ、公式戦連敗の船出となった。しかし、チームのスタイルが大きく変わるということは困難を伴うものだ。

 常に目の前の試合で勝利を目指す“ジーコスピリット”を掲げる鹿島アントラーズの伝統から、受け入れ難く思うファンサポーターも少なからずいるはずだが、新監督を招聘した強化部も覚悟を持って決断したはずだ。

 それがいつ、どういう形で身を結ぶのかはわからないが、Jリーグの2020シーズンを見ていくにあたり、大きな注目ポイントの1つであることは確かだ。

(文:河治良幸)

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