セレッソ大阪は巧妙。なぜ勝ち点を積み上げられるのか。ロティーナ体制2年目の魅力を解説【週刊J批評】

セレッソ大阪が好調だ。現在はリーグ戦6試合負けなしで、首位・川崎フロンターレと勝ち点差「7」の2位につけている。ミゲル・アンヘル・ロティーナ体制2年目のチームは、なぜここまで安定してポイントを積み上げていけるのか。19日に行われる川崎Fとの天王山を前に、解説する。(文:河治良幸)

2020年08月18日(Tue)10時00分配信

シリーズ:週刊J批評
text by 河治良幸 photo Getty Images
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川崎Fと7差の2位

セレッソ大阪
【写真:Getty Images】

 ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が率いるセレッソ大阪はアウェイで柏レイソルに3-1で勝利し、第10節を終えて勝ち点を21に伸ばした。首位を走る川崎フロンターレは勝ち点28。両者には7の差があるが、水曜日の直接対決でセレッソが勝利すれば差は4に詰まるが、川崎Fが勝てば10に広がる。“6ポイントゲーム”とも呼ばれるが、序盤戦の山場とも言える大一番だ。

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 前節の試合前まで9試合で9得点5失点だったセレッソは、柏を相手に3得点を奪って12得点に伸ばした。ただし、非常に攻撃的だったかというとそんなことはなく、シュート数は6本。一方の柏には22本を記録されている。ボール支配率も45%で下回ったが、典型的な堅守速攻型のチームと見るのは間違いだろう。

 実際に立ち上がりの15分はセレッソがボール保持率55%前後を記録していた。5分にブルーノ・メンデスがあげた先制ゴールは自陣でボールをつないでから、GKキム・ジンヒョンのパスを受けた右サイドバックの松田陸がディフェンスの背後にロングボールを蹴り、相手のディフェンスを下げた状態でブルーノ・メンデスが左から来る清武弘嗣につなぎ、動き直しからリターンを受けてゴール左に突き刺すという形だった。

 つまりカウンターではないが中盤で細かいパスワークやコンビネーションを駆使した訳ではなく、ロングボールを活用して決定的なスペースを作り、うまく使って決め切るという形だった。

 そこから前半の半ばに一度、自陣に守りを固めてカウンターを増やすと、前半の終わりにラインを押し上げ、攻撃に転じれば後ろで回してからロングボールを活用するなど、中途半端なところでボールを失うリスクを極力排除して1-0のリードを維持した。

今季のC大阪を象徴する勝利

 後半になるとハーフタイムに攻撃的な選手交代を行った柏が攻勢を強めるが、セレッソは自陣で中央に絶対スペースを開けない守備を徹底して、クロスは上がっても空中戦に強い瀬古歩夢とマテイ・ヨニッチのセンターバック・コンビを中心に跳ね返し、セカンドボールを拾って前に運ぶという流れを繰り返し、攻撃でも守備のバランスが崩れないようにしていた。

 後半のスタートから75分ごろまではセレッソのシュートが1本も記録されていない。ただし、55分に中央のFKから清武弘嗣の蹴ったボールが柏の古賀太陽の頭にあたり、方向が変わってGK中村航輔の右下を破る形からセレッソに追加点が入った。

 そこからセレッソは4枚の交代カードを切り、一方の柏も3枚の交代を行うと、87分に途中出場の西川潤が自陣のカウンターから鮮やかなゴールをあげる。同じく途中出場の柿谷曜一朗が斜めにボールを運んで大きく前方に蹴り出すと、ディフェンスの裏に飛び出した西川がGKの手前から左足で浮かせて頭上を破った。

 結局シュート6本でオウンゴールを含む3得点という効率の良さで3-0としたセレッソ。直後にGKキム・ジンヒョンのキックがオルンガに当たってしまう不運な形から柏エースの11得点目となるゴールが決まり、1点返される形となったが、内容的には今シーズンのセレッソを象徴するような試合運びで川崎Fに次ぐ得点数を誇る柏に勝利した。

 柏戦で今シーズン最多の3得点をあげたが、ここまでリーグ戦では2得点が3試合、1得点と無得点も3試合ずつとなっている。

 得点の時間帯は前半に4得点、後半に8得点で、後半により得点が入りやすい傾向はJリーグの例に漏れないが、注目に値するのは失点時間帯だ。ここまでの5失点のうち前半に喫したのは1失点だけ。しかもオウンゴールだった。それは唯一の黒星となった名古屋グランパス戦で、後半にも1点を追加されて0-2で敗れている。

 ここまで勝った6試合は全て先制点をあげており、引き分けた3試合のうち2試合がスコアレスドロー。1-1で引き分けたサガン鳥栖戦は51分に先制されたものの、ロティーナ監督が“3枚替え”を敢行して坂元達裕の同点ゴールにつなげた。基本的にはロースコアの展開に持ち込んで先制点をあげ、その後は守備を固めながら、あわよくば追加点を狙う形で試合をクローズする。

川崎F戦は大一番

 攻撃はポゼッションをベースとする形もカウンターも両方あるが、基本的にはビルドアップで大きなリスクをかけることなく、できるだけシンプルに高い位置を起点とすることを志向している。

 象徴的なのが左サイドハーフの清武で、ビルドアップにおいてはあまりボールを触りに下りることなく、相手のディフェンスを引きつけながら高いポジションをキープして、チャンスメークに徹しているように見える。右サイドの坂元はドリブラー寄りの選手だが、オフ・ザ・ボールのポジショニングは極めてロジカルだ。

 ボランチの藤田直之とレアンドロ・デサバトは一人がCBの間に下り、もう一人が前めでパスワークの中継点となるが、できるかぎりノーリスクでサイドの選手につなぎながら、前線やサイドの高い位置にボールが入った時に連動してサポートしながら、同時にリスクも管理する。そうしたビルドアップにおける立ち位置は相手との関係や時間帯、スコアで変わって来るが、そこもロティーナ監督がディテールまで設計したプランを選手たちが忠実に実行しているようだ。

 最多得点の川崎Fと最少失点のセレッソ。そう表現すれば分かりやすいが、川崎Fはここまで29得点を記録している一方で、7失点しかしていない。今回はアウェイの試合であることも考えれば、セレッソとしてはロースコアに持ち込んで、引き分けでも御の字と言いたいところだが、直接対決で勝ち点差を縮めるチャンスでもある。

 ここまでスタメンはもちろん、5枚の交代枠で入って来る選手も含めて猛威をふるう川崎Fに対して、セレッソがいかにロースコアの試合展開に持ち込みながら、少ないチャンスで勝機を掴めるのか。まだまだ先は長いが、シーズンの行方を左右しうる真夏の大一番に注目だ。

(文:河治良幸)

【了】

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