川崎フロンターレの連勝はなぜストップしたのか?「“悪くない”では勝てない」、無失点に封じた名古屋グランパスのプラン【週刊J批評】

明治安田生命J1リーグ、名古屋グランパス対川崎フロンターレが23日に行われ、1-0で名古屋が勝利を収めた。名古屋はいかにして、10連勝中だった川崎Fを倒したのか。ここ2試合で11得点を挙げていた川崎Fが無失点に封じられた理由に迫る。(取材・文:河治良幸)

2020年08月26日(Wed)11時00分配信

シリーズ:週刊J批評
text by 河治良幸 photo Getty Images
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川崎Fの連勝は10でストップ

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【写真:Getty Images】

 川崎フロンターレは名古屋グランパスに1-0で敗れ、連勝記録が10でストップした。川崎Fの鬼木達監督は「選手と力を合わせてやってきた。できればもっと勝ち続けて彼らの成長、チームの成長を見たかった」と心境を語っている。

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 確かに川崎F視点から見れば前半5分の守田英正のシュートが中谷進之介にブロックされたシーンを含む、いくつかのチャンスをものにできていれば。そして失点シーンでチームの守備が後手に回った状況でも、キャプテンの谷口彰悟が跳ね返せていれば。後半の早い時間帯に三笘薫のアクシデントが無ければとエクスキューズは付くが、トータルして名古屋が川崎Fの良さを出させず、要所を制した結果であることは確かだった。

 これまでハイレベルで素晴らしい戦いを見せているが、10連勝はすべてパーフェクトだったわけではなく、主導権を握られる時間帯もあれば、付け入られる隙もあった。それでも前半にゴールを仕留めれば逃げ切り、接戦になれば前半からの“エサまき”も生かしながら、驚異的なベンチパワーで5枚の選手交代をフル活用して連勝を重ねてきた。今回はそれらを発揮させなかった名古屋が勝ち点3を掴んだ。

 先述した川崎Fの決定的なシーンは中谷のパスを守田がインターセプトしたところから始まっている。最後は右のニアゾーンを抜けた家長昭博が折り返したボールを守田がダイレクトでシュートに持ち込んだ。しかし、シュートは中谷にブロックされ、二列目から飛び出してきた下田北斗が押し込もうとするが、今度は中谷の左足に阻まれた。

 決められなかった守田は「自分自身、前半のチャンスでネットを揺らしていれば」と悔やんだが、逆に止めた中谷は「僕のパスミスからやれてしまった。守田選手のところはフリーになってしまったので反省したい」と語りながらも「チームを救うプレーができた」と安堵していた。

威力を失った川崎Fの攻撃

 最大のチャンスは川崎Fに訪れたわけだが、立ち上がりは名古屋が川崎Fの攻撃に怯むことなくプレッシャーをかけ、攻撃に転じればうまく幅を使いながら、機を見て中央を狙う攻撃を繰り出していた。これまでの10連勝の試合に比べても、川崎Fの守備が後ろ下げられるシーンが前半から目立っていた。

 川崎Fは2-2で引き分けた先のYBCルヴァンカップで名古屋に4-3-3のインサイド、つまりアンカーの脇にあるスペースを使われて何度もピンチを招いていた。この経験を踏まえて、この試合では守備の時に下田がすぐ守田の隣に下りて4-4-2、あるいは4-5-1のブロックを組む形にシフトすることで、そこで起点を作られる機会を減らすことには成功している。

 しかし、その分だけ自分たちからボールを取りに行く守備ができなかった。名古屋の攻撃を止められても、攻撃が低くなってしまう傾向が出ていた。特に名古屋の1トップを担う金崎夢生のチェイシングがしつこく、どうしてもセンターバックのポジションが低くなるので、全体が間延びして攻撃の厚みが出ないという状況が生まれていた。

 そうした状況で有効になるのは早いタイミングで前線に当ててセカンドボールを拾い、その間にラインを押し上げる形だが、川崎Fはロングボールを多用するチームではない。低い位置から高さがある前線のレアンドロ・ダミアンをめがけて蹴っても、名古屋の丸山祐市、中谷進之介に跳ね返され、シンプルなクロスも通じなかった。

 そうした時に頼りになるのは右の家長昭博、左の三笘薫のウィングだが、名古屋の両サイドバックに行く手を阻まれて、得意のドリブルを繰り出すシーンが非常に少なかった。家長はインサイドハーフの脇坂泰斗、右サイドバックの山根視来とのトライアングルを生かして何度か危険なシーンを作っていたが、ここ3試合で4得点を挙げていた三笘は20歳の成瀬竣平に阻まれる形で、前を向くことすらほとんどできなかった。

質が高かった名古屋の得点シーン

 その一方で名古屋も川崎Fの守備ブロックに対してマテウスやガブリエル・シャビエル、前田直輝のドリブルが何度かディフェンスを突破しかけたものの、急所を突くまでには至らなかった。大きなチャンスは前半26分、右サイドに開いた金崎が上げたクロスが相手に跳ね返されたボールがゴール前にこぼれ、拾ったガブリエル・シャビエルが左足で鋭いシュートを放ったが、惜しくもディフェンスのブロックに阻まれてしまった。

 名古屋が均衡を破ったのは前半44分だった。「始まりは相手の右サイドから。ワンタッチでバイタルに横パスが入って、そこからでしたけど、その辺の準備というところと、誰が行くのかはもう少しはっきりしたほうがよかった」と川崎Fの谷口は振り返る。名古屋の展開が絵に描いたように素早く正確につながり、川崎Fの守備を上回った。

 ボランチのジョアン・シミッチから右でボールを受けた成瀬は三笘のプレッシャーをいなしながら、縦パスを前田直輝に付けた。前田は車屋伸太郎のチェックを制して中央に折り返し、ガブリエル・シャビエルが稲垣祥にボールを下げる。

 稲垣はダイレクトで左サイドに展開。マテウスがボールをおさめると、吉田豊が大外を駆け上がり、マテウスのマークに来た家長の視線を引きつけると、マテウスの速い左足クロスは谷口の頭上を超え、車屋の前に飛び込んだ金崎が頭で合わせた。

「マテウスからドンピシャのボールが来た」と振り返る金崎にとっては名古屋に復帰後初ゴールとなった。谷口は「最後はクロスでしたけど、正直、僕が弾いていればなんの問題もなかった」と語ったが、川崎Fは素早い展開の中で守備がうまく連動できていなかった。組織面が問題にせよ、個人の問題にせよ、これだけ質と精度を伴った攻撃が繰り出されるとゴールにつながってしまう。

奏功した名古屋の逃げ切りプラン

 そして、川崎Fにとって失点以上に悔やまれるのは0-0から、あるいは1点を失った後でゴールを奪うことができなかったことだろう。序盤の得点チャンスを逃した守田も「失点よりも得点できなかったことが問題だとチームで認識しています」と語る。川崎Fは名古屋の倍となる16本のシュートを記録したものの、名古屋の粘り強い守備を崩すことができず、枠内シュートは名古屋を下回る4本に留まった。

「夢生くんがいい時間帯に取ってくれて、守り甲斐があった」と言う中谷をはじめ丸山、ボランチの稲垣とシミッチ、右の成瀬と左の吉田豊、時にはアタッカー陣も体を張って川崎Fの攻撃を阻み続けた。

 ただ、そうした頑張りだけが名古屋の勝利の理由ではない。川崎Fがハーフタイムに大島僚太と旗手怜央を同時投入して中盤と前線の両方を活性化してくると、名古屋はトップ下のガブリエル・シャビエルに代えてサイドアタッカーの相馬勇紀を投入。前田と金崎が並ぶ4-4-2にして前からのプレッシャーを強め、攻撃ではロングボールをうまく活用して川崎Fを押し込むことで、“ウノゼロ”の伝統を持つイタリア出身のマッシモ・フィッカデンティ監督は波状攻撃を許さなかった。

 そこから川崎Fの鬼木監督は左足を痛めた三笘の交代も含めた3枚のカードを早い時間に切るが、名古屋は後半34分に前田を下げ、マテウスを前線、右サイドバックで奮闘していた成瀬をサイドハーフに上げて、経験豊富なオ・ジェソクを右サイドバックに。ここからは明確に、自陣にブロックを敷く形に切り替えた。

 後半の頭から守備的になるのではなく、川崎Fに運動量が残っている時間帯はプレッシャーをかけ、残り10分になったところで守り切るプランにシフトした。名古屋は何度か厳しい場面を迎えたが、最後まで守備の集中が途切れることはなかった。

「悪くないでは勝てない」

 中谷は「チームが厳しい時に体を張ってファウルをもらってくれる。今日は得点がついてきた」と金崎を絶賛する。金崎の活躍はもちろんだが、一人一人が役割をこなしながら、チームとしての意識が統一していた名古屋は勝利に相応しい内容だった。言い換えると、これぐらいのパフォーマンスを出さないと川崎Fに対して勝機は来ない。川崎Fの強さを改めて思い知らされた試合でもあった。

 川崎Fの谷口は「悪くないゲーム。でもレベルの高いチームと戦うには悪くないでは勝てない。いいゲームをしないと勝てない」と語る。

「落ち込んでいる暇はない。しっかり反省するところ、修正するところは大事ですけど、切り替えて次に準備したい」

 これで川崎Fと名古屋の勝ち点差は8になった。名古屋はサンフレッチェ広島戦が延期になった関係で消化が1試合少なく、現在の勝ち点差以上に詰まっている。そして前節、川崎Fに5-2で敗れたセレッソ大阪もベガルタ仙台に2-1で勝利し、勝ち点を24に伸ばした。さらにFC東京、柏レイソル、ガンバ大阪、浦和レッズが続き、再開後しばらく低調だった横浜F・マリノスもようやく5勝2分5敗のイーブンまで戻してきた。

 ある意味“フロンターレ包囲網”の様相を呈しているが、まだまだ過密日程が続く長いシーズンで、タフな戦いが続いて行く。

(取材・文:河治良幸)

【了】

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