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Jリーグ 3年前

平均20歳、マリノスに挑んだサガン鳥栖の若き4バック。小柄なCBが活きるサッカーとは?【西部謙司のJリーグピンポイントクロス】

明治安田生命J1リーグ第25節、横浜F・マリノス対サガン鳥栖が9月30日に行われ、1-1の引き分けに終わっている。この試合で4バックに若い選手を並べた鳥栖は、昨季王者の横浜FMとどう渡り合ったのか。小柄なセンターバックの起用が戦いのカギを握っていた。(文:西部謙司)

シリーズ:西部謙司のJリーグピンポイントクロス text by 西部謙司 photo by Getty Images

平均20歳の若き4バック

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【写真:Getty Images】

 AFCチャンピオンズリーグ出場クラブの前倒し試合となった第25節、横浜F・マリノス対サガン鳥栖。鳥栖の4バックが若かった。

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 森下龍矢(23歳)、原輝綺(22歳)、松岡大起(19歳)、大畑歩夢(19歳)。平均20.75歳である。若いだけでなく攻守に躍動していた。84分、エリキに同点ゴールを喫して1-1の引き分けとなったが、もう少しで昨季王者から3ポイントをもぎとれるところだった。

 鳥栖の4バックは身長が低い。原だけが辛うじて180cmだが、森下と大畑の両SBはそれぞれ170cm、168cm。原とセンターを組む松岡は170cmとCBとしてはかなり低い。ところが、大柄なジュニオール・サントスを巧みに封じていた。

 DFとしては小柄な4バックの特徴はスピードだ。地上戦なら高さは関係がない。松岡は素早くジュニオール・サントスの前に出てパスをカットしていたし、いずれも寄せのスピードがあり、さらにこの4人はフィードが上手い。自陣からパスをつないでいこうという鳥栖の方針に合った人選といえる。

 ちなみに、相手の横浜FMも3バックのセンターが喜田拓也だった。喜田も身長は170cmと松岡と変わらない。両チームのCBの身長の低さは、この試合を象徴していた。

ハイプレスvsハイプレス

 Jリーグもそうだが、ヨーロッパでCBを務めるのは長身選手が定番である。180cmではむしろ低いほうで、190cm台も珍しくない。しかし、中には小柄なCBもいる。

 ひと昔前の例になるが、バルセロナではハビエル・マスチェラーノが小柄なCBだった。マスチェラーノはアルゼンチン代表やリバプールではMFでプレーしていた。CBに下げたのは、バルサのアンカーにハマらなかったこともあるが、結果としては大成功だった。スピードがあって1対1に強く、MFなのでパスも上手い。ボールポゼッションが高く、ハイライン基調のバルサでは、守備のほとんどはカウンターアタック対応だった。大きくて空中戦に強いCBより、速くて上手いCBが必要だったわけだ。

 松岡と喜田もMFである。マスチェラーノと似た2人が起用されていた理由もバルサとほぼ同じだろう。どちらもできるだけ高い位置からプレスをかけ、ラインを高くしてコンパクトに守っていた。

 ハイプレス対ハイプレスだから試合のテンポは速い。

 ハイテンポは横浜FMの望むところだが、それは鳥栖も同じ。相手のハイプレスにひるまず、鋭いパスをつないでいった。コンパクトな4-4-2はポジショニングが整理されているだけでなく、速さもあり、昨季王者と互角に渡り合っていた。

 48分、CKのこぼれ球を森下が叩き込む。これでFC東京戦に続く2試合連発。森下は俊敏でキックのパワーもあり、技術も安定していて判断もいい。

 今季初の連勝が見えてきた終盤の84分、5試合連続ゴールで絶好調だったエリキに同点にされる。松岡のパスがインターセプトされたのがきっかけだった。勝っていればこの試合のマン・オブ・ザ・マッチだったかもしれない松岡の痛恨のミスである。ただ、このミスはリスクではなくコストだ。DFからパスをつないでいくというチームの方針がある以上、この手のミスはシーズン中に何回かは必ず起こる、糧になる種類のミスといえる。

 今季は降格がない。こんな機会ももうないわけで、リスクを恐れずチャレンジするにはもってこいの1年といえる。若いディフェンスラインもまだまだ成長していくに違いない。エドゥアルドという守備の重鎮もいるので、この先もこの4バックのままかどうかはわからないが、鳥栖のチャレンジ精神がよく表れていて成果も十分だったと思う。

(文:西部謙司)

【了】

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