取り残される日本代表、欧州化するアフリカ勢。カメルーン戦で露呈した「規律」のなさの大問題

日本代表は現地9日に国際親善試合でカメルーン代表と対戦し、0-0で引き分けた。前半から日本が劣勢に立たされたのには、はっきりとした理由がある。成長を続けるアフリカ勢の実力をまざまざと見せつけられ、停滞するサムライブルーの将来には不安が募った。(取材・文:舩木渉)

2020年10月10日(Sat)13時41分配信

text by 舩木渉 photo Getty Images
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カメルーン代表が強かった理由

トニ・コンセイソン
【写真:Getty Images】

 カメルーン代表は決してステレオタイプな「アフリカのチーム」ではなく、より「欧州のチーム」に近い姿をしていた。

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 昨年10月からチームを率いているポルトガル人のトニ・コンセイソン監督は、現地9日に行われた日本代表戦の後にこう語っている。

「規律と互いへの尊敬の念は成功するのに欠かせない要素だと思っている。それはカメルーンも日本も、世界のどのチームにとってもそうだ。我々にとっての規律は日本と少し違っていてもう少しルーズというか、自由度のあるものになるが、いずれにしろ選手には幸せな気持ちで代表に合流してほしい。そして互いへの尊敬を持ちながら、アフリカの選手特有のナチュラルな創造性やアドリブの力を失わないでほしい。私はそこにヨーロッパの厳しさを与えたい」

 コンセイソン監督の言う「規律」とは、何かしらのルールや禁止事項で選手たちを縛りつけるものではない。よく称賛の対象になる日本的な「規律」でもない。あくまでピッチ上において「我々はこういうコンセプトでプレーするので、君たちにはこの時、ここで、こういうことをしてほしい」というチームが共有すべきアイディアを授けるものだろう。

 すでに就任から1年経っているものの、彼らも例外なく新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年は全く活動できていなかった。コンセイソン監督が指揮を執ったカメルーン代表戦は、日本代表戦前の段階で3試合のみ。しかも、うち1試合は「水曜日の試合で、(欧州からの)移動も含めて選手が火曜日にしか合流できず、準備できなかった」準備不足もあった。

 これだけ時間がない中でも、指揮官が「我々がイメージしているサッカーとのギャップを実戦を通じて改善していこうとしている」と語ったカメルーン代表は、日本代表戦でもその取り組みの成果をすぐに発揮していた。変化を即座に察知して的確な修正を施せる監督の手腕も見事なものだった。

 序盤こそ不安定だったものの、相手のプレッシングの感覚を掴むと、ビルドアップに工夫を加えた。2人のセンターバックの間に、4-3-3のアンカーを務めていたサミュエル・ウム・グエを落とし、パス供給を安定させた。合わせて両サイドバックが高い位置を取り、特に右のコリンズ・ファイは何度も日本陣内深くまで進出して際どいクロスを放ってきた。

アフリカ勢はもはや欧州のチーム

 ボール保持時には4-2-3-1、ボール非保持時に4-4-2になる日本は先頭の大迫勇也と南野拓実がカメルーンのセンターバック2人にプレスをかけていたが、グエがビルドアップに参加してからは数的不利を作られて苦戦した。このアンカーの動きを捕まえきれなかったのは、劣勢を強いられた原因の1つだ。

 ボランチで先発出場していた中山雄太が「最初の時間はハメにいきたかったですけど、アンカーを捕まえきれない時間がすごく多かった」と語れば、トップ下の南野拓実も「7番のボランチ(グエ)と中盤の、相手のいい距離感に対して日本のディフェンスがハマらなかったのは1つの課題だと見ている」と悔やんだ。

 コンセイソン監督の狙いもまさにそこにあった。

「最初の5分は、我々のディフェンスラインが特に不安定だった。それは日本のプレスが非常に効いていたからで、それをどうかいくぐるかが最初の課題だった。なので4人のDFのうち3人残して、1人を中盤に近づけるようにしてプレスをかいくぐろうとした。そうすることで徐々にかいくぐれるようになり、攻撃に移ってチャンスを作れるようになった」

 微妙な翻訳の問題はあるかもしれないが、原理は先に述べた通りだ。「3人を残す」のは2人のセンターバック+グエ(あるいは2人のセンターバックと片方のサイドバック)のことを指しているだろうし、「1人を中盤に近づける」のはサイドバックのポジショニングを意味していると捉えることができる。

 こうした基本的なビルドアップの手法や、適切な距離感を保ち続け、各ポジションの選手がそれぞれに与えられた立ち位置と役割を遂行する戦い方は、昨今の欧州サッカーでスタンダードになりつつあるものだ。試合中の変化への対応もこなれている。

 いわゆる身体能力への依存度が高く、精神面にムラがあり、統率の甘いというステレオタイプな「アフリカのチーム」像は、もはやカメルーン代表のレベルになれば当てはまらない。「ヨーロッパの厳しさを与えたい」という監督の意向が伝わりやすい土壌もできている。欧州生まれや、若い頃から欧州クラブで育った選手が増え、彼らにとって「当たり前」のレベルが上がっているのは間違いない。

森保監督は具体性を欠き…

森保一
【写真:Getty Images】

 ひるがえって日本代表はどうだろうか。今回の合宿は、史上初めて欧州組のみで行われている。欧州リーグでプレーする選手だけで代表チームを十分に組めるようになったことは重要な進歩で、約1年ぶりの集合でも短期間のトレーニングのみで4バックと3バックを試合中に使い分けることも、ある程度はできている。それでもカメルーン代表の現状を見るに、将来への危機感を抱かざるをえない。

 森保一監督はカメルーン戦を終えた後、「試合の途中も、もちろん局面の部分で勝つこともあれば、相手に上回られる部分もありましたけど、まずはアグレッシブに、自分たちの戦いを挑んで、選手たちは勇気を持って戦ってくれたと思います」と選手たちの敢闘精神を称えた。

「少し相手に優位になったところでも粘り強く食らいつくしつこさも出してくれて、そこでチームの戦う意思統一ができて、今日の試合を無失点に抑えることができたと思います。そのベースがあって、徐々に攻撃のところも良くなっていったと思います」

 こうした守備面に関する言及は、その通りだろう。特に吉田麻也や冨安健洋、酒井宏樹といった欧州トップリーグで戦うDFたちは力強くカメルーンの選手たちを迎え撃ち、安定感あるプレーを披露した。

 一方で攻撃面に関しては、選手たち個々のアイディアに依存している部分が大きく、再現性の低さが目立ったように感じる。「連係・連動」と森保監督は繰り返してきて、次のように「絵はあった」と共通のイメージが描けていることを示唆する発言もあったが、即興性に頼っていてはいつまで経っても進歩がない。

「今日の試合を想定した時に、ボールを奪った瞬間に相手がプレッシャーを激しくかけてくることはスカウティングでもわかっていましたし、練習でも意識的に、プレッシャーを回避し、素早く相手のゴールに向かっていけるようにと、やってくれようとしていたと思いますが、実際のつながりの部分でもっと上げていかないといけないところがあったと思います。『絵』はあったと思いますけど、実際のクオリティをさらに上げていく作業をしていかなければいけないと思います」

 後半に3バックにしてからは選手たちの立ち位置と役割が明確に整理され、ようやく少し好転したように見えた。それでもベンチ前の森保監督から聞こえてくる指示は両ウィングバックに「ワイド!」とサイドに張り出すよう促す声や、「セカンド(こぼれ球)を拾おう!」「粘り強く!」など、やや具体性を欠く、メンタル面に訴えかけるようなものが多かった(現地のスタジアムで観戦していればもっと戦術的な指示を聞くことができたのかもしれないが…)。

日本代表は大丈夫?

南野拓実
【写真:Getty Images】

 南野は試合後に「今日みたいに確かにチームとして形のある攻撃をすることが少ない中では…」と個の仕掛けの重要性を語り、ハーフタイムにシステム変更に踏み切る際に「特別こうしろっていう指示っていうのは個人的にはなかった」と明かしている。

 攻撃の形として表れていたのは、右ウィングバックの伊東純也を走らせてのサイドアタックくらい。当然、全てのポジションで周りの選手との距離感や立ち回りが変わってくるはずだが、そこでの連係・連動は選手任せになっていたのかもしれない。外部から見ている限りでは、少なくともそう感じるには十分なパフォーマンスだった。

 試合後にキャプテンの吉田が「2つのフォーメーションを試せた、新しい選手を試せた、(コンィションのいい)強い相手とできたのは、チームにとっては非常に大きな強化になった」と語ったように、欧州でカメルーン代表のような実力の伴ったチームと対戦できたことは大きな財産になるだろう。

 森保監督が述べた

「ウィングバックがワイドなポジションを取ることによって、4バックの相手に、より守備の対応を難しくする」

「相手の右サイドバックの2番(コリンズ・ファイ)と左サイドバックの6番(アンブロワーズ・オヨンゴ)が前半かなり高い位置に来て、我々の守備対応が難しくなっていた中で、3バックにして(マークの)役割をはっきりさせる」

 といった3バックにおける基本的な狙いは、ある程度発揮されていたように思う。ただ、ワールドカップなどの本大会で勝ち抜くのに、「ある程度」でいいのか…と疑問を投げかけなくてはいけない気もしている。

 もちろん時間はまだあるが、相手の守備ブロックを意図的に動かせない不安定なビルドアップから、ゴール前でのチャンスメイク、試合中の対応力含めて課題は山積状態だ。13日に対戦するコートジボワール代表は、カメルーン代表よりも一段階上のレベルにいる。そこで森保ジャパンがどんな改善を見せてくれるか、まずはそれを楽しみにしたい。

 そして最後に、コンセイソン監督が自ら「補足したい」と言って残した金言を1つ紹介したい。

「私たち、監督と選手は非常に親しい近い関係であり、そして相手をお互いに気遣う関係でありながら、我々(監督を含めたスタッフ陣)は明確にリーダーシップを見せる。選手たちが我々のリーダーシップを理解すれば、そこから非常に良い流れが生まれると信じている」

(取材・文:舩木渉)

【了】

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